生成AI旋風に安心できぬマイクロソフトの正念場 GAFAMきっての「優等生」がドル箱事業で減速
コロナ禍におけるIT特需の一服に、インフレによるコスト圧力が重なり、クラウド導入に慎重となっている企業が多いようだ。マイクロソフトは「クラウド移行はまだ初期段階」(ナデラCEO)と言うものの、会社側は2023年7~9月も同事業の売上高成長率を14~16%程度と見込み、先行きを楽観視しているとは言いがたい。
マイクロソフトが成長ペースを維持、あるいは再加速するうえで、カギを握るのが生成AIサービスのマネタイズだ。同社は1月から、OpenAIの大規模言語モデル(LLM)をアジュール上で利用できる「Azure OpenAI Service」を一般に提供。大ブームとなったOpenAIの生成AIを、セキュリティーを高めたかたちで展開し、イケアやボルボグループなど1万1000以上の組織が導入している。
生成AIへの関心がフックとなり、一度マイクロソフトのクラウド部門がタッチポイントを持つことができれば、芋づる式にアジュールのサービス群に引き込める。
マイクロソフトの沼本健エグゼクティブバイスプレジデントは7月のインタビューで、「アジュールを10年以上担当し、たくさんのサービスをローンチしてきたが、『Azure OpenAI Service』に対する反応はものすごい。AI活用の議論が切り口となり、それに必要なデータについても顧客と深い話ができるようになってきた」と手応えを語った。
後手に回ったアマゾンの反撃
GAFAM内でのパートナーシップにも走る。7月18日、メタは独自のLLM「Llama(ラマ) 2」を研究・事業向けに無償提供すると発表した。アジュールやAWSなど幅広いプラットフォームで利用できるが、あえて優先パートナーに名指ししたのがマイクロソフトだ。
アプリケーション開発者向けのクラウドサービスを持たないメタはかねてマイクロソフトとAI関連で提携していたが、アジュールのプラットフォームとしての優位性が改めて示される格好となった。「生成AI関連のクラウドサービスについて、当面はマイクロソフトが独走するのではないか。アマゾンが後手に回った感は否めない」(ITRの甲元プリンシパル・アナリスト)。
当然、アマゾンも黙っていない。
同社は4月、マイクロソフトの攻勢に引きずり出されるかたちで、独自LLMの「Amazon Titan(タイタン)」を発表。他社製も含む複数のLLMから、顧客のニーズに合ったものを選択できるアプリケーション構築サービス「Amazon Bedrock(ベッドロック)」も投入した。7月末にはアマゾンの幹部がロイター通信の取材に対し、ベッドロックを数千社が試用し始めたと明かしている。
熾烈な競争を制し、マイクロソフトはGAFAMの優等生を貫くことができるか。近年磨き上げてきたアジュールのサービス群が、生成AIをきっかけに獲得した顧客に刺さるかどうか、その真価が問われている。
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