防衛省装備調達に欠落している"大事なもの" 兵器調達の際に「時間」「総額」の概念がない

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2014年の富士総合火力演習における10式戦車と 輸送ヘリCH-47JAチヌーク(写真:Phoenix06 / PIXTA)

かつての防衛庁は「買い物官庁」と揶揄されてきた。それは防衛庁が単なる内閣の外局であり、政策立案は求められず、自衛隊の管理と戦車や戦闘機の調達を防衛大綱や中期防衛力整備計画という「買い物リスト」に従って買い揃えていけばいいからだった。だが、その「買い物」すら、まともにできていなかった。それは、防衛省になってからも同じだ。

防衛の指針となる防衛大綱では今後10年の主要装備の数だけが決まっている。たとえば戦車の定数は300両だが、その内訳(たとえば10式戦車200両と90式戦車を100両とか)までは示されない。極端な話、それが第二次世界大戦の米軍のお古のM4シャーマンでもいいことになる。中期防衛力整備計画(中期防)は大綱の半分の期間の5年間において、ある程度は調達すべき主要装備の数が示されている場合がある。だがそれは中期防中の5年間の計画でしかなく、調達される装備の総数が明記されているわけではない。

たとえば10式戦車やオスプレイの最終的な調達数は明示されていない。F-35A戦闘機のように「2個飛行隊、42機」と明示されているケースのほうが圧倒的に少数だ。そのF-35Aにしても、いつまでに2個飛行隊の整備が必要で、そのための予算は総額がどれだけ必要か、というような案件は国会でいっさい審議されていない。

「とりあえずビール」ならぬ「とりあえずオスプレイ」

本年度予算で、昨今、いろいろと物議を醸したオスプレイの調達が決まったが、オスプレイは中期防で17機の調達が決まっているだけで、最終的に何機(何個飛行隊)が、どのような構想のために必要であり、そのためにはいつまでに全機を調達し、プロジェクトの総額はいくらになるのかを防衛省は説明していないし、当然、国会でも審議されなかった。

筆者は防衛予算のレクチャーで担当者にも、また記者会見で小野寺前防衛大臣にも尋ねたが彼らは「何機入れるのはわかりません。とりあえず導入してから考えます」と答えている。これは換言すれば事実上調達計画は無いと主張しているわけで、ほかの民主主義国でありえないような、税金の使い道に対する「おおらかさ」だ。

言うなれば、居酒屋での「とりあえずビール」の感覚で防衛装備が調達されているといえる。先に記事(「投資8000億円!新戦車は陸自弱体化への道」)を書いた10式戦車も同様だ。国会議員たちはどのような構想で10式が開発され、どの程度の数が何のために必要で、それをいつまでに戦力化する必要かを知らされないまま、開発予算と調達予算にGOサインを出したのだ。

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