好印象の心理学「魅力的な顔の特徴と撮影時の肝」 「女性らしい、男性らしい顔」がウケるとは限らない

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余談ですが、幼形化というと、私が捜査協力したある詐欺事件の容疑者の顔が強烈に思い出されます。容疑者は、化粧と角度と補正技術を駆使して出会い系サイトのプロフィール写真を作成し、実年齢より30歳もサバを読んでいたのです。捜査資料を読みながら、「さすがに無理があるでしょう」と思っていたのですが、それが通用すると思った容疑者の思考に驚きです。

ここまではテクニックの要素ですが、自然に印象をよくする方法もあります。顔の中で自身の意思で変化させられるもの。それは、表情です。どのような表情が、好印象・魅力的なのでしょうか。

魅力的な笑顔の条件

笑顔は、好印象や暖かな印象を与え親近感や信頼感を醸成します。大切なのは、口角、あるいは、口角と頬を左右対称に引き上げることです。左右非対称だと、軽蔑しているように見える。さらに、実年齢より老けて見えるという研究結果があります。

意図的に笑顔を作るとき、練習しないと、どうしても口だけの笑みとなり、目に冷たい印象を残してしまいます。私たち日本人は、アメリカ人に比べ、表情をみるとき、目に意識が向かいます。笑顔を意味する日本の絵文字は「^_^」ですが、アメリカでは「:-)」です。悲しみの場合、日本では「>_<」、アメリカでは「:-(」です。

実際、目は笑っているものの、口は泣いている合成写真を、日本人は笑顔と判断する傾向にあることがわかっています。ですので、口角とともに頬も引き上げられるように練習しましょう。頬を引き上げれば、目じりにしわが寄り、暖かな印象の笑顔になります。

目が笑っていない左側はどこか冷たい印象を与える(写真:空気を読むを科学する研究所)

角度も加味しましょう。顔の右側に比べ、左側のほうが感情が強く表れることから、左の頬を見せるように笑顔で写真撮影に臨むのがよいです。実際、Instagramユーザーの写真を対象にした調査において、調査対象の写真の41%が左頬、31%が右頬、19%が正面を向け撮影され、8%が特定の傾向なし、ということがわかっています。意識・無意識問わず、私たちは、左頬を向けるのがよい、と感じているのかもしれません。

ということで、次回、写真撮影をする機会には、笑顔+左頬を意識してみてください。きっと好印象を与えられる写真が撮れると思います。

「笑顔+左頬」がベストショット(写真:空気を読むを科学する研究所)
参考文献
A・トドロフ/中里京子訳(2019)『第一印象の科学:なぜヒトは顔に惑わされてしまうのか?』みすず書房
河野哲也・山口真美・金沢創・渡邊克巳・田中章浩・床呂郁哉・高橋康介編(2021)『顔身体学ハンドブック』東京大学出版会
三浦佳世・河原純一郎編(2019)『美しさと魅力の心理』ミネルヴァ書房
Griffiths, R. W., & Kunz, P. R. (1973). Assortative mating: A study of physiognomic homogamy. Biodemography and Social Biology, 20(4), 448–453. https://doi.org/10.1080/19485565.1973.9988075
Lindell, A. K. (2017). Consistently showing your best side? Intra-individual consistency in #selfie pose orientation. Frontiers in Psychology, 8, Article 246. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2017.00246
Yuki, M., Maddux, W. W., & Masuda, T. (2007). Are the windows to the soul the same in the East and West? Cultural differences in using the eyes and mouth as cues to recognize emotions in Japan and the United States. Journal of Experimental Social Psychology, 43(2), 303–311. https://doi.org/10.1016/j.jesp.2006.02.004
清水 建二 株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役

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しみず けんじ / kenji shimizu

1982年、東京生まれ。防衛省研修講師。特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問。日本顔学会会員。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社がある。

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