女性が「戦力ダウン」する組織は何が問題か 「仕事の質」は評価されているか

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企業が人事評価をする際の基準には複数の要素があります。 実際に働いた時間、勤続年数のような「長さ」、実際の営業成績などに連動させる「成果」、などです。

長時間労働が「頑張っている」印象につながる日本

日本の会社の多くは、まだまだ「長さ」に重きを置いている印象を受けます。これには一種の必然性もあるようです。

 人事経済学が専門の東京大学・大湾秀雄教授は「日本の高度経済成長期は、長時間働けるモーレツ社員をできるだけ多数採用することが、会社の成長につながる時代でした。先行者利益や規模の経済が強く働き、長時間労働をしてでも、人より市場に参入し、人より大きく生産規模を引き上げることで、競争に打ち勝つことができました」と言います。こうした環境下では、採用方針も自然に長時間労働ができる人間を選別していくようになります。こうした現象を経済学では「ラットレース(ねずみレース)均衡」と言うそうです。

「でも、今は長時間労働が業績につながるという時代ではなく、また、会社の評価も成長率からROEへとシフトしてきています」と大湾教授。
ラットレース均衡は成り立ちにくくなっているのです。

ただ、だからといって、すぐにカルチャーが変わるわけではありません。何となく長時間労働ができる=頑張っているという印象につながるという風土が残っているカイシャも多いと思います。

「中には不確実性が高く、突発的な事象に対応しないといけないという職業もあるでしょう。でも、優先順位をつけて業務を選別していけば、多くの職場で残業時間をゼロに近づけることが可能だと思います」(大湾教授)。

時代が変化し「長さ」が成果につながらないにもかかわらず、その側面だけで育児中社員を低評価にとどめ、責任ある仕事を任せないというのは、能力やポテンシャルを認めないことになり、優秀な人のモチベーションを低下させます

評価の反映先も重要です。評価は報酬(賃金、ボーナス)だけに反映されるのではなく、長期的な昇進などに影響し、それが働く人のインセンティブを作り出します。経営学の東京大学教授・高橋信夫先生も著書などで、報酬などの外発的動機よりも、「面白い仕事ができるか」という内発的動機のほうが人の意欲が高まることを指摘しています。

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