このような日本企業の”行動しなさ”は、組織の意思決定が全員参加と全員納得を前提にしている点にある。これは日本文化論や日本組織論でたびたび指摘されるように、強力な意思決定装置が存在せず、空気と雰囲気が支配するためだ。
これが調達難にもつながっている。
コロナ禍の現場で起きていたこと
コロナ禍になったとき、某重電企業で働いている調達部員と話していると、モノ不足時の無念さを聞かされた。
「ほんとうに悔しかった。というのも、モノ不足になるのはわかっていたんです。しかし、私たちは物量を押さえることができませんでした。
市場に1万個あるとします。でも1万個を押さえようとしたら、多重の承認が必要でした。そのうちに、1万個がなくなってしまった。それで中国で探すと、それらの部材があるというんですね。聞いたらどうも、私たちが買い逃した部材が中国にある。
ということは、転売ヤーが買い漁っているときに、私たちは何もできずに見逃していたようなんです。あれは悔しかった」
そして、この多層承認と全員納得の構造は、さまざまに影響を与えている。
たとえば、取引先から値上げの申請があるとする。値上げするにしろ、しないにしろ、早く決めないと納期が間に合わない。そんなとき、日本企業の担当者は、できるだけコストアップの証拠を集め資料を作成する。
すると、上司、さらに上司、さらにその上司から、あれこれと五月雨式に質問が届く。仔細なところを根掘り葉掘り訊かれる。誰も責任を取りたくないからだ。本質的な質問ではないものがあるのに、全員が納得するまで値上げ承認の判断が下されない。ときには待ったなしの状況であるにもかかわらず。
たとえば、日本の住宅メーカーでは木材メーカーが値上げを申請したとき、その妥当性について資料を求める。元の原価構成がどうで、そのうちどこが上昇したのか。過剰な便乗値上げはないか、そして円安リスクなどを必要以上に負担させようとしていないか……を確認する。
この確認は真摯ともいえる。コストを抑えようと努力する姿勢は評価されていい。「海外のバイヤーは適当なもんです。値上がりのときに、さほど査定しない。『はいはい、こんなもんね』と仕入先からの値上げ申請にたやすくサインしてしまう。
「これまで、コストを抑える意味では日本方式がよかった。しかし供給の逼迫時には逆効果でした。厳密に査定しても抑えられるのは数%。その数%に目をつむって調達を優先する思考になれなかった」
こう大手住宅メーカーの調達責任者は語る。関係者全員にお伺いを立てるのではなく、即決で値上げを認めていれば供給難には苦しめられなかったかもしれない、と。
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