「生成AI」今から活用したい人が知るべき驚く盲点 自分の考えを文章で書く「超アナログ能力」が必要

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山本:なるほど。考える人は考えるけど、考えない人はアテンション・エコノミーの世界に没入し続けて、さらに熟慮しないような感じになるということですね……。

僕も大規模言語モデルが出てきたときに、同じような印象をもちました。これを使いこなすには、プロンプトでそれなりの文章を作らなければならないし、ChatGPTの回答もそれなりに長い。ショート動画15秒の世界にいる人、タイムパフォーマンス至上主義的な価値観にはまっている人が、そのような時間的コストや思考のコストに耐えられるのだろうか。

すごく単純化して言えば、TikTokのヘビー・ユーザーとChatGPTのヘビー・ユーザーは属性が違うように思うのですね。もちろん、もっと実証的に見ていかなければいけませんが。

栗原:事実、ChatGPTが生成する文章は、ChatGPTが学習に利用しているデータがそれなりの知識層からのデータに偏っていることから、当然そのような層でのやりとりを反映したものになっているという指摘があります。

山本:そうなると、反射的でファストなアテンション・エコノミーの世界は、「思考する世界」からますます切り離されていく可能性があります。その分断が問題だ、とまずは言えるのかもしれません。

(後編<8月4日公開予定>に続く)

山本 龍彦 慶應義塾大学大学院法務研究科教授

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やまもと たつひこ / Tatsuhiko Yamamoto

1976年生まれ。2005年、慶應義塾大学法学研究科博士課程単位取得退学。博士(法学)。桐蔭横浜大学法学部専任講師、同准教授を経て現職。2017年、ワシントン大学ロースクール客員教授、司法試験考査委員(2014年・2015年)。主な著書に『デジタル空間とどう向き合うか』(日経BP、共著)、『AI と憲法』(日本経済新聞出版社)など。

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栗原 聡 慶應義塾大学理工学部教授

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くりはら さとし / Satoshi Kurihara

慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。NTT基礎研究所、大阪大学産業科学研究所、電気通信大学大学院情報理工学研究科などを経て、2018年から現職。博士(工学)。電気通信大学人工知能先端研究センター特任教授、大阪大学産業科学研究所招聘教授、人工知能学会倫理委員会アドバイザーなどを兼任。人工知能学会理事・編集長などを歴任。人工知能、ネットワーク科学などの研究に従事。

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