民主的選挙とは、どの候補者がありのままの真実を告げるのかを明らかにすることを目的としたコンテストである、と説明するには無理がある。政治家の大半はなるべくあからさまなウソはつかないようにしている。真っ赤なウソをついた所を捕らえられてしまうような質問には、プロボクサーがウィービングやダッキングするように頭を上下左右に振る。ただ政治家は約束を常に誇張するものだし、対抗馬が勝った場合の危険性も大げさにする。
政治家が将来に対する自らのビジョンを宣伝し、他者の主張をやり込めるのは無理もない。それでもやり過ぎなければ、そして同類の政治家が政権に就いていた際に達成したことに少しでも類似性があれば、信ぴょう性には足るのだ。
通常の選挙より「偽り」が多い
投票者は政治家の鼻がずんずん伸びるのを、見極める目を持っているし、彼らが選出した代表議員が聖者であることも期待してはいない。「疑いの利益(確かか不確かかわからないが、とりあえず信じてみた方が有利かもしれない)」に委ねてみようという覚悟はあるのである。私の予測では、投票日にはデビッド・キャメロン首相がこの利点を持っていることが明らかになるのではと思う。
投票者にはまた、既成の左派の政党はより大きく税金を課して使い、既成の右派系の党はその逆のことを行う、という通常正しい本能的直感もある。投票者の反応の仕方は、彼らが過去数年間の経緯をどう受け止めているか、また自分自身と、自分の家族のために将来何を望んでいるか、を反映する。私は投票者の判断は通常正しいという考え方に賛成する。
しかしながら今年は、英国の有権者は通常の選挙期間よりも多くの量の偽りと立ち回りを切り抜けて行く必要がある。有権者は5月7日に投票に向かうわけだが、選出議員の候補者は彼らに3つの大きなウソを信じろと言っているのだ。その3つのどれもがそれぞれ別の意味で危険なウソだ。
まず2つのウソであるが、英国独立党(UKIP)とスコットランド国民党(SNP)という、ポピュリストの政党の中でも、最も成功を収めている2党が触れ回っており、これは記憶に残るかぎり選挙期間に私が目にしたこれまでで最大のペテンと言えるウソだ。
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