反EUの「英国独立党」、誰が支持しているのか 党大会開催の海岸の町で市民に聞く
5月上旬、英国は5年ぶりの総選挙の時期を迎える。連立与党保守党と最大野党労働党の支持率は互いに拮抗し、次回も絶対的多数を獲得する政党がいない展開になりそうだ。目玉となるのが欧州連合(EU)脱退と移民制限を掲げる英国独立党(UK Independence Party=UKIP)の動きだ。
「変人、狂人、隠れ人種差別主義者の政党」とかつてキャメロン首相に言われたこともあるUKIPだが、昨年5月の欧州議会選挙で大躍進を遂げ、英国に割り当てられた議席数の中で最大議席を獲得した。総選挙の予想支持率でも保守党、労働党に次ぐ第3党だ。
「英国の近代政治史上、最も成功裏に既存政党に挑戦をした」(『右派の反抗』ロバート・フォード、マシュー・グッドウィン著、2014年)と高く評価される一方で、UKIPを忌み嫌い、かつての独ナチスと同一視する国民もいる。2月27日と28日、英南東部で開催されたUKIPの春季党大会に足を運び、人々の反応と今後を探ってみた。
「移民がダメと言うわけではないが」
ロンドンから電車で約1時間半。砂浜の海岸で知られるマーゲート(ケント州)に到着する。98%近くの住民が英国生まれの白人である。宿泊先でUKIP党員のジョンさんに出会った。アンティーク家具の修理が仕事だという。
「移民を入れるなと言っているわけではないんだよ、ただ、今みたいにEUから無制限に人が入ってくるやり方を止めるべきだと思うね。そのためには(人、モノ、サービスの行き来を自由にする)EUから脱退するべきだと思う。少なくとも、脱退するべきかどうかを国民に聞くべきだ。国民投票をやるべきなんだよ」
英国がEUの前身となる欧州共同体(EC)に加入したのは1973年。英国民の間には大英帝国として世界に君臨した過去を持つことへの誇り、「自国だけでやっていける」という思いが強い。このため、国民の多くが欧州統合への動きにはつねに一定の懐疑を抱いてきた。英国はEUの単一通貨ユーロ圏に参画せず、自国通貨ポンドを維持。EU域内でビザなしで移動できる「シェンゲン協定」にも参加していない。「EUとは一線を画す」精神は多くの国民の間で共有されてきたといえよう。
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