世界が固唾を飲んで見守る欧州の最大危機 EUで一気に噴き出す矛盾

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2月27日、ドイツ連邦議会はEU(欧州連合)、ECB(欧州中央銀行)ならびにIMF(国際通貨基金)の「トロイカ体制」によるギリシャへの金融支援の4カ月延長を賛成多数で可決した。

2月末に終了する予定だった金融支援プログラムが6月まで延びたため、ギリシャの銀行が連鎖破たんするなどの危機はとりあえず避けられた形だ。ただ、1月の総選挙で新政権を握った急進左派連合(SYRIZA)の主張していた緊縮財政の緩和はトロイカにほとんど受け入れられていない。ギリシャ国民の間には不満が高まり、首都アテネでは抗議デモで火炎瓶が飛び交う騒ぎになった。

SYRIZAは4月中に具体的な改革案をトロイカと合意し、国債償還のピークが訪れる7~8月を控え6月以降も支援を延長してほしいところ。だが、政権発足時に主張していた国有企業の民営化の凍結など、構造改革や財政健全化に逆行する政策はEU内でもドイツやオランダが猛反発しており、今後の交渉は予断を許さない。

今年は欧州各地で選挙イヤー

ギリシャだけではない。今年は世界でも欧州(ヨーロッパ)に特に関心が集まっている。政治、経済、社会制度上の矛盾が噴出し、国政選挙も各地で予定されているからだ。

4月19日のフィンランド選挙では、ギリシャなど南欧諸国の取り組みが甘いと考えるがゆえに、EUの支援に難色を占めす国家主義政党、真のフィンランド人党がどこまで勢力を伸ばすかが注目されている(現在は第3党)。

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5月7日には英国総選挙がある。EU域内からの移民急増で昔からの市民の職が奪われているとの意識が強くなっているが、2大政党の保守党、労働党とも民意をうまくくみ取れず、やはりEUからの離脱を主張する英国独立党(UKIP)が急速に支持を拡大している。

現在は第3党の自由民主党と連立政権を組む保守党は、単独過半数を確保できた場合は17年までにEU残留か離脱かを問う国民投票を実施するとアピールしているが、条件付き公約が逆に顰蹙を買ってしまっている。

スペインでも5月24日に統一地方選挙、9月27日に独立機運があるカタルーニャ州の議会選挙が控える。ギリシャのSYRIZAを範にしたように、昨年結成ながら急膨張しているのが極左政党ポデモスで、既成の2大政党の解体を主張している。

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