今年後半に通貨ユーロは下落から上昇へ反転 欧州リスクをみずほ銀行の唐鎌大輔氏に聞く

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からかま・だいすけ●2004年慶應義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU 経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月より、みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)国際為替部で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。近著に『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社刊)(撮影:風間仁一郎)

ユーロ圏の経済は低迷を続け2014年度の実質GDPはIMF(国際通貨基金)などの推計で0.8%にとどまり、2015年1月の消費者物価(HICP)上昇率はマイナス0.6%とデフレ傾向が鮮明化してきている。ECB(欧州中央銀行)も1月22日、QE(国債など証券の大量購入による量的緩和策)を3月から開始すると発表した。米国経済が回復を続けFRB(米国連邦準備制度理事会)による利上げの時期が注目されるのとは対照的だ。みずほ銀行国際為替部のチーフマーケット・エコノミスト唐鎌大輔氏に、欧州経済の問題点と日米欧の為替見通しを聞いた。唐鎌氏は著書『欧州リスク―日本化、円化、日銀化』(2014年、東洋経済新報社刊)で、いち早く、ユーロ圏の日本化傾向を指摘していた。

必要なのはドイツの財政支出

――ユーロ圏の2015年1月の消費者物価(HICP)上昇率はマイナス0.6%で、デフレが鮮明化してきました。国際機関によるユーロ圏の成長率見通しも下方修正されてきています。

ユーロ圏経済における最大の障害は、満足な財政出動ができないということだ。ドイツが方針を変えて、財政政策を積極的に打つということがなければ、景気の明確な反転は難しい。

通貨ユーロは金融緩和によって下がったとはいえ、債務問題を抱えて経済が弱い国々からすれば十分に安い水準ではない。しかも、長い目で見れば、ユーロはドイツの莫大な経常黒字などを背景に反騰する可能性が高い。なおかつ、景気の悪い国の消費が低迷しており、輸入が伸びないということもあって、周縁国でも経常収支が改善しているという事実もある。ユーロ圏が1つの経済圏として機能するためには、通貨安の恩恵を満足に享受できない周縁国のために、ドイツが財政支出を行ってやる必要がある。

昨年12月、ユーログループは雇用・成長・投資に関する3000億ユーロの政策パッケージを決定したが、EUとして拠出する「真水」の部分はその10分の1の300億ユーロに過ぎず、あとは民間投資を呼び込むことで補おうとしている。これは恐らく画に描いた餅に終わるだろう。かといって、国内で不動産バブルの懸念も出ていることを踏まえれば、ドイツに単独で財政支出させるのは難しそうである。現状、ドイツは内需が弱く、経常黒字がGDP(国内総生産)の7%以上に達している。不均衡は看過できないほど大きい。

ユーロ圏の経済統計は平均であって、すべてにおいてドイツのウェートが高く、周辺国ではより状態が厳しいことに注意が必要だ。例えば、1月の消費者物価上昇率は平均でマイナス0.6%だが、スペインではマイナス1.5%だ。失業率がその代表で、ユーロ圏全体では、11.4%だが、スペインは23.7%ある(2014年12月)。ユーロ圏全体の数字が改善し始めたとしても、それで安心してはならない。

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