今年後半に通貨ユーロは下落から上昇へ反転 欧州リスクをみずほ銀行の唐鎌大輔氏に聞く
――解決策はない?
あるとすれば一時、議論された共同債の発行だ。これができれば、周縁国での財政出動も可能だし、QEにおいても共同債を買えばいい。だが、共同債はドイツが頑なに拒否した。今のように、ギリシャが債務免除を求めているような状況では半永久的に棚上げだろう。
壮大なユーロ売り投機は、巻き戻される
――ユーロ相場の先行きをどう見ていますか。
いまのユーロ相場はかつての03年~07年にかけておきた円安バブルと似た状況にある。莫大な経常黒字があり、ディスインフレなので理論的には通貨は本来、高くなるはず。だが、内外金利差が開き、域内から域外への対外証券投資やユーロを借りて外貨で運用するキャリートレードなどが膨らみやすくなっており、投機のユーロ売りだけがどんどん積み上がっている状況だ。
要するに、今のユーロ安の実態は壮大な投機だ。投機なので、いつかは清算される。円の場合、米国のサブプライムバブルの崩壊をきっかけに、07年夏から反転して円高に向かい始めた。
――では、米国の利上げ、ECBの手詰まり感などをきっかけにユーロが反転する時期も近い?
今年後半にはユーロが上昇に転ずる可能性が高いと見ている。ECBの緩和の手が尽きて、FRBが金利を上げたら、とりあえずユーロを売る材料は出尽くしになる。過去を見てもFRBが実際に利上げに踏み切ったら、ドルは下がるというのが経験則だ。積み上がったユーロショート(売り)が巻き戻される可能性は高い。06~07年当時、経常黒字やデフレを理由に円高に警鐘を鳴らしていた人もいたが、顧みられなかった。07年夏から円売りが巻き戻されて円高に進むと、手の平を返すように「経常黒字だから」、「デフレで実質金利が高いから」という説明が盛んになされるようになった。それと同様のことが起きると思う。
――相場見通しは?
ユーロ相場は、目先は、ECBの緩和モード、米国の利上げを意識して1ユーロ=1.10ドルを割ってしまう可能性がある。ただ、1ユーロ=1ドルまでは目指すことはないとみている。年央以降、反転して、1ユーロ=1.20ドル台を回復するだろう。正確な水準の予想は難しいにしても、「反転」がキーワードであることが重要だ。ただし、3通貨の中で、円だけは弱くなり続けるとみているので、ドル円は円安ドル高、ユーロドルはユーロ高ドル安になり、通貨の強さは、ドル、ユーロ、円の順になるだろう。ユーロ円は年末1ユーロ=140円台に回復していると思っている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら