ついに、ECB(欧州中央銀行)が量的緩和に踏み切った。ここ数年、市場や政治の要求に屈せず、量的緩和からは一線を画してきたECBまでが量的緩和を行うことで、金融市場はついに歯止めを失った。
堕落したのは、実は日本と欧州だけ
では、世界は超金融緩和の世界に入り、金融市場はマネーに溢れ、バブル突入、世界金融市場崩壊、となるかというと、そうでもない。量的緩和に対して、原理的にも実践的にも強く反対している私にとっては、その方が、わかりやすく原稿を書けるのであるが、現実はそうではない。なぜなら、堕落したのは、日本と欧州だけだからだ。
米国の中央銀行(FED)、あるいはFRBのバーナンキ議長(当時)が、もっとも量的緩和の正当性を強く主張し、信じ、愛し、実行してきた。心の底から正しいと思って、ある意味、前向きに実行してきた。世界唯一の「明るい金融計画」ならぬ「明るい量的緩和」を行ってきた。
一方、日本とECBは、市場と政治とエコノミスト世論の量的緩和の催促に、抵抗を続けてきた。日本銀行の白川前総裁は、理論で量的緩和に抵抗してきたが、政治の力に屈せざるを得ず、最後はアコードを結び量的緩和を行った。しかし、それでも、量的緩和を行うに際して、副作用だけ説明する「辛気くさい量的緩和」であり、そのせいで、せっかく量的緩和を行っても効果がなくなってしまったと、揶揄された。
ECBは、実は、積極的に、資産購入を行ってきた。それは、景気対策としての量的緩和ではなく、欧州金融市場崩壊、欧州経済崩壊、ユーロという仕組みの崩壊の危機に際して、リスク資産となってしまった国債を買い入れてきた。
つまり、欧州金融危機に際して、投資家が質への逃避を行い、ギリシャを始め、ポルトガル、スペイン、イタリアといった国々の国債の価格が暴落(金利は上昇)した。国債は、暴落して一定の利回り以上になってしまうと、国債という低リスク資産としての意味がなくなり、買い手が全くつかなくなってしまう。利回りが7%を超えてくると、その国の財政は持続可能性に明らかな疑義が生じ、取引は凍り付いてしまったようになくなってしまう。投機家だけが反転を狙って、投げ売りを拾うぐらいで、金融市場が機能しなくなってしまう。
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