そして、米国は、失業を念頭にこの緩和を行い、インフレ率のターゲットはあったものの、そのターゲットである2%に達していないにもかかわらず、失業率の低下を達成すると、直ちに出口に向かい始めたのである。すなわち、世界に迷惑をかけておきながら、自分の庭においては副作用なく、きちんと勝ち逃げを成功させつつあるのである。
量的緩和と呼ぶのは日本だけ、他は資産買入れ
そして、実は、今回、量的緩和に踏み切ったECBも、出口の期限を2016年9月と決めており、実は出口を最初から意識している。量的緩和の危険性を良くわかっているのだ。
実際、ドイツやオランダの中央銀行は、乗り気ではなかったわけであるし、また、国債を買い入れることに関する損失のリスクは、ECBは20%しか負担せず、80%は自国で、つまり、それぞれの国の中央銀行で負担することになっており、歯止めが効いた仕組みになっている。
こうやって見ると、そもそも、量的緩和を喜んでやっている国というのは、米国と英国など一部の国に限られており、それに日本も、黒田総裁になってから仲間入りをしたのだ。つまり、量的緩和信奉者というのは中央銀行の中では、極めて例外的な存在なのである。
しかも、重要なことは、自ら量的緩和と呼んでいるのは、日本だけなのである。欧州も米国も、資産買い入れということが強調されており、マネーの量を供給する、という側面はまったく強調されていない。
実際、いわゆる量的緩和、市場関係者やエコノミストが勝手に量的緩和と呼んでいる量的緩和において、文字通り量的緩和を行っているのは日本銀行だけなのだ。つまり、量的緩和とは、金融政策の目標が金利から、マネー供給量に変わったことを意味するが、マネー供給量の目標を設定しているのは、日本銀行だけなのだ。
一方、米国も欧州も、買い入れ資産額は明示しているし、それを目標としているが、マネー供給量、マネーサプライ、ベースマネーというものの数値目標は設定していないのだ。そもそも、マネーについては、全く関心がないと言って良い。買い入れ資産をいくらにして、何を買うか、ということに終始しているのだ。だから、米国は量的緩和ではなく資産買い入れプログラムなのであり、バランスシートポリシーなのだ。
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