これを、バーナンキは冷笑した。おまえらは、本当に自分勝手で、ご都合主義だなと。量的緩和をやれば、やるなと言うし、止めようとすれば止めるなという。いったいどっちなんだ。米国経済は盤石だから、経済が混乱してあえいでいる新興国の中央銀行の人々を小馬鹿にしたように、せせら笑った。
しかし、新興国の哀れな中央銀行の方が、理論的にも現実的にも正しいのであり、バーナンキこそ自分勝手である。しかし、これは、アメリカの伝統に基づく、孤立主義、自国の経済こそがすべての世界であり、今さら驚くことではない。
米国から「往復びんた」をくらった新興国
なぜ新興国の言い分の方が正しいかというと、要は、量的緩和とその終了で、バブルを勝手に作られ、勝手に潰されるという、いわば往復びんたであり、実体経済が、これに振り回されることになったからだ。
これが、なぜ過度の金融緩和が問題であるかを最も端的に表している。バブルを作って潰すのだ。実体経済が金融の乱高下に振り回され、それにより、資源が的確に使われず、ロスが生じてしまう。それが問題なのだ。
米国においては、実体経済の調整として金融緩和を行っている。だから、実体経済に対する悪影響は少ない。ところが、新興国は、米国の金融市場といういわば世界金融市場の影響をまともに受ける。だから、必ず被害を受けることになる。恩恵を受ける可能性は、トータルでは決してない。常に攪乱要因であり、国内経済のために、ベストな金融政策を行っているのであるから、そこへ影響を与えるということは、必ずベストな地点から経済はずれてしまうからだ。
米国の金融市場の影響が、新興国の経済に対して極端に大きい場合は、為替の調整はうまくいかない。金融市場のバランスをとる為替レートと、実体経済のバランスを取る為替レートは大きく異なるからだ。
このように、攪乱されたところへ、例えば、今回の原油安のようなショックが追加的に起こると、新興国経済のうち、原油安がマイナスな国においては、経済が崩壊する危機に陥る。ヴェネズエラが良い例だ。もちろん、ヴェネズエラはもともと、インフレになりがちな経済であり、金融政策も実体経済構造も脆弱であることが大きな理由ではある。しかし、崩壊に、外部の金融政策が影響を与えていることも間違いがない。
話が長くなったが、我々のメインストリーに大事なことは、実は、このような世界に甚大な影響を与えた米国の量的緩和は、米国FED自身は、量的緩和と呼んでいないのだ。資産買い入れプログラムと呼んでおり、またはバランスシートポリシーの一部と言われている。バランスシートポリシーとは、中央銀行が自らのバランスシートを使う政策だからだ。
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