日本だけが「出口なき金融政策」を実行する謎

実は歯止めが効いている、ECBの金融緩和策

まさに、ECBは、この金融市場の機能不全を解消するために、リスクが高まってしまったと市場に見なされた資産である国債を買ったのだ。その分、ドイツ国債など格付けの高い、むしろ利回りが低下した国債を売った。これらの危機と見なされた国の国債から逃避した資金が殺到して、利回りが低下した国債は、金融市場の機能不全どころか、買い手が殺到しているわけであるから、この国債を買う必要はなかった。

そして、何より重要なことに、量的緩和は何が何でも行いたくなかったのである。したがって、国債の買い入れによって、中央銀行から流出するマネーが増加することを防止したかった。その結果、市場で買い手がいなくなったリスクの高い国債を買い入れ、一方、市場で買い手が溢れている国債を売り、マネーの量は中立的になるようにしたのである。

米国の金融緩和によって、迷惑を被った新興国

したがって、米国は世界的にはマイノリティ、異端派であったのである。さらに、新興国を考えれば、ほとんどの新興国は、米国の大規模な量的緩和に強く反対していた。G20でブラジルが非難したのは有名だが、新興国にとっては、米国の量的緩和は迷惑なだけだった。

米国で余ったマネーは、新興国金融市場になだれ込み、不動産、金融バブルを膨らませた。一部の国は、金融バブルにとどまらず、実体経済も高インフレになってしまった。金融バブルが実体経済に波及したのである。それらの国は、金融市場も実体経済も米国に比べれば、吹けば飛ぶような規模であるから、金融バブルは経済のすべてを混乱させる。

新興国経済の弱点は、インフレとそれによる通貨価値の下落である。バブルにより、見かけの経済規模、成長率、株価、地価は膨らんだが、それを相殺するようにインフレが起き、それにより通貨価値が下落した。

実体経済へのプラスが大きくないままに、バブルの膨張を抑え、インフレと通貨下落を抑えるために、新興国の中央銀行は金利を引き上げざるを得ない。これにより、実体経済は腰折れする。実体経済の実物の投資が減退する。外的な金融要因による金融バブルの実体経済への影響はマイナスなのである。だから、新興国の中央銀行は、米国に対して怒っているのである。

そして、米国は量的緩和を縮小させ始めた。終了と言われているが、それは正しくない。購入をストップしただけであり、まだ量的緩和により買い上げたリスク資産は米国FEDのバランスシートの上に大量に残っている。量的緩和は縮小しているが、まだ終わってはいない。出口に向かっているだけだ。

米国の量的緩和が出口へ向かい始めると、新興国の中央銀行は、また怒りの矛先を量的緩和および米国FEDへ向けた。量的緩和を縮小するのは止めてくれと。

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