反EUの「英国独立党」、誰が支持しているのか 党大会開催の海岸の町で市民に聞く

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近年のユーロ危機、債務危機をきっかけに加盟の是非をめぐる国民投票を求める声が高まったが、加盟を否定する票が大勢を占めることを恐れる政治家は実施には及び腰だ。

既存の大手政党(保守党、連立政権のもうひとつの政党となる自由民主党、労働党)の中で、脱退の是非について国民投票を行うと明言しているのは保守党のみ。しかし、「もし総選挙後に保守党単独政権が成立した場合、2017年に実行する」という条件付きだ。

「保守党には任せられない。やる気がない」とジョンさんは言う。

「メディアは偏向している」

別の宿泊者レイチェルさんもUKIP党員だった。レイチェルさんは地方議会の議員に立候補する予定だ。

「メディアは偏向している。UKIPについての悪口ばかり。支持者は白髪の老人男性がほとんどいう描写も、実態を反映していない」

レイチェルさんが「偏向している」典型的な番組として挙げたのは、2月16日に民放チャンネル4が放送した「UKIPの最初の100日」だった。もしUKIPが総選挙で第1党となり、政権を担当したらどうなるかを描いたドキュメンタリー風のドラマである。

ドラマはこんな風に進んだ。UKIPが政権党となり、英国はEUから脱退する。EU市場へのアクセスを失ったと考えた大手企業が続々と英国から引き上げ、失業者が増加する。非合法で滞在する移民の摘発・取締りに軍隊が使われるようになる。反移民政策に反対する多くの市民がデモ行進し、警察と衝突。社会は暗く、不穏な雰囲気になる――。実写フィルムを挟み、現実とフィクションの境目がわかりにくいようになっていた。放送後、偏向ぶりを抗議する苦情が放送・通信業界の監督機関オフコムに3000件近く寄せられた。2月下旬、オフコムはチャンネル4に対し調査を開始すると発表している。

追い討ちをかけるように、この番組放送の翌週にはBBCがドキュメンタリー「UKIP党員たちと会おう」を放送した。ナイジェル・ファラージUKIP党首(現欧州議会議員)が下院議員に立候補予定のケント州サーネットのUKIP党員の活動を追った。

出演した党員たちは全員が白人の中高年者たち。そのひとりが、黒人を差別的表現と見なされる「ニグロ」と呼んだ。「黒人は嫌い。小さいときに何かあったのかもね。忘れているのかもしれないわ。そういうことってよくあるでしょう」などと発言した(地方議員でもあったこの党員は番組の放送前に党から除名処分となった)。

以前にUKIPへの資金提供者のひとりが「男女は平等ではない」と発言したことがあったが、UKIPはこれまでにも数回、失言問題で党員らが除名あるいは降格措置にあっている。

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