今回の総選挙に潜むイギリスの「深刻な危機」 イギリスを知り尽くす元香港総監が斬る

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国の政治家のキャンペーンの誇張には、英国が50年前なら可能だったかもしれない世界の出来事に対する支配力をまだ同程度に行使できる、という妄想的信念が具象化されていると言える。

良きにつけ悪しきにつけ、それは真実ではない。英国はもはや、世界的影響力を持ってはいないのだ。実際、英国人は格下げされた自国の重要度についてあまり気にしていないようだし、その意味合いについてよく分かってさえいるようだ。

いま英国で必要な政治家とは

国の主権はこれまで以上にとらえ所のない概念になりつつある。英国経済の見通しは、それが中国であれ、米カリフォルニア州であれ、国境を超えた出来事にますます依存するようになってきている。

環境汚染物は風に乗って運ばれてくるし、国境管理に力をいれたところで膨らむばかりの移民の圧力に圧倒されてしまうおそれがある。国家安全の問題は外交政策と国内政策をますます同時に巻き込むようになってきている。最近の政治漫画で、英国の爆撃搭乗員が任務に出掛け、その1人がもう1人に「南ロンドンの若者数人を爆撃するのには随分長い道のりに感じるんだがな」と言っている様子を描いていた。

私たち英国人が直面する課題に対処するには、この国の根本的原因を管理できる能力は限られている、ということをまず認識する必要がある。この国は自分の頭で考えることができ、有権者に率直で、英国はもはや一国だけでは問題を解決することはできないのだ、とはっきりと、かつ真面目に説明できる政治家を心底必要としている。

ますます危険性を増し、お互いに繋がり合ってきているこの世界で、英国はウソや妄想に基いた集団決定などやっている余裕などないのだ。有権者にとっては、政治家が勇気を持って聞きたくないような真実を告げてくれた方が、あるいは少なくとも危険なウソと関わらないように、と誠実に伝えてくれた方が、得になるのである。

(C)Project Syndicate

クリス・パッテン 英オックスフォード大学名誉総長

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Chris Patten

元英国保守党議員で最後の香港総督。欧州委員会外交専門部会委員、英オックスフォード大学総長を歴任。

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