ようやく「円安貧乏」の恐怖が少し遠のいたようだ 日本経済は2023年後半も「小吉」を維持できるか

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こうしてみると、足元の景気はまあまあ良いとして、今後の持続性には不安が残る。とくに2024年の景気は、「小吉」以下となってしまうのではないか。

内需が期待できないとなれば、外需に期待したくなる。ところがウクライナ戦争の動向が見通せず、米中対立の先鋭化から対中輸出にも懸念があり、それ以前に中国経済は「脱コロナ」の回復がはかばかしくない。17~18日に、インドのガンディーナガルで行われたG20財務相・中央銀行総裁会議でも、「世界経済のリスクのバランスは依然として下向きに傾いている」との議長声明を発出している。

貿易収支は急速に改善、為替介入は当面ない?

強いて言えば、国際的なエネルギー価格が下落していることがプラス材料と言えるだろう。日本の貿易収支は2022年、19.9兆円という記録的な赤字をつけた。それが足元では急速に減少し、7月20日に公表された6月貿易収支(速報値)は、なんと431億円の黒字となった。貿易収支が黒字になるのは、2021年7月以来、実に23カ月ぶりのことである。

経験的に言って、通関統計には1月は輸入が大きくなり、6月は輸出が多くなるという季節性がある。実際に、今年1月の貿易収支は3.5兆円という史上最大の赤字であった。そこからわずか5カ月で黒字に転じたのだから、ちょっとしたサプライズである。

ちなみに季節調整値でいくと、6月の収支は5532億円の赤字となる。といっても、昨年7月から4カ月連続で貿易赤字が2兆円台になっていたことを考えれば、まるで景色が変わっている。

コンスタントに「毎月2兆円以上」の赤字が出ると、「実需の円売り」が生じてしまうのだ。ゆえに昨年秋は、「悪い円安に向かってまっしぐら」であった。当時の筆者は当欄で「日本が『円安貧乏』から脱却する3つの地道な方法」を寄稿したけれども、1年近く経つとずいぶん雰囲気は変わるものである。

実際に6月に1ドル=145円近くまで円安が進んだ時点では、一部では「為替介入」があるとの観測が飛び交ったものである。筆者が神田真人財務官の立場であれば、それはまったく考えない。貿易面から見ると、昨年と今年では地合いが違いすぎるからである。

これだけ急速に貿易収支が改善しているのは、何といってもエネルギー価格(鉱物性燃料)の下落が大きい。石油もガスも石炭も、すでにウクライナ戦争勃発時点の水準を下回っている。こんなふうにエネルギー価格に振り回されるのは、われらが日本経済の宿命といえよう。

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