「ひざの不調」70代女性の7割が悩む病気の正体 変形性膝関節症の原因と対策を専門医が徹底解説

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そんな軟骨がなくなって骨どうしが当たると〝小さな骨折〞が起こります。それは骨がボキッと折れたのではなく、骨の表面に髪の毛くらいのひびが入った状態です。そんな小さなひびでも、骨の表面には知覚神経がたくさん分布しているので痛いのです。「微小骨折」と呼ぶ症状です。

この微小骨折は安静にして寝ていると1日でカルシウムが沈着して治ることがあります。翌朝起きたら、「あれ? 昨日ほど痛くないわ」と思ってまた畑へ行けます。それは髪の毛くらいのひびにカルシウムが運ばれて修繕が行われたから。ひざの痛みに波があるのはこのためなのです。

変形性膝関節症は、男性860万人、女性1670万人と推定され、女性は男性の2倍近くいることがわかっています。その原因は、「女性ホルモンの減少」。エストロゲンの分泌量が急激に減る閉経後は、微小骨折や骨欠損が起こりやすくなるといえます。

西洋では、変形性膝関節症の一番の原因は、急な体重増加ですが、日本でも最近は食事の欧米化により、急に標準体重を超える人が増えてきています。

それでも日本でもっとも多い原因は、「姿勢」によるもの。頭が前に先に出て歩く〝ニワトリ歩き〞が元凶といっていいでしょう。この「ニワトリ歩き」と「太りすぎ」という2つの原因に、およそ8割の人が該当します。

はじめは、歩くときにただ頭が前に出ているだけですが、それが次第に、「頭が前に出ないと歩けなくなる」という、タチの悪い生活習慣です。この姿勢のせいで軟骨にかかる負担が偏っていきます。

生活習慣以外でひざの負担が大きくなる関節症

歩き方と、過体重という2つの理由の次に、変形性膝関節症の原因の3つめに多いのは、自己免疫障害から生じる関節リウマチがあります。

これは自分を守るべき抗体が、何を間違えたか自分の軟骨を食べるために生じます。また、炎症性疾患という、バイ菌や結晶がひざ関節内に入ることで生じる2次性の関節症もあります。これは原因を取り除けば早々に治ります。

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ひざ近くの骨を骨折し、それが治った後に、ひざにかかる力が変わって生じる骨折後2次性関節症というものもあります。股関節が悪くなり、左右の足の長さが変わったために生じる症状もこの2次性の関節症のひとつですが、これらは全体の1割程度であり、変形性膝関節症の原因の8〜9割はニワトリ歩きと標準体重オーバーです。

僕らのからだは本当によくできていて、たいていのトラブルを自然に修復する機能を備えています。これらいずれの関節症も、自分で治す自己修復機能がはたらきます。

ただし、「歩き方」は別です。誰かから指摘され、自分で気がついて戻さないと、手遅れになることがあります。

巽 一郎 一宮西病院整形外科部長

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たつみ いちろう / Ichiro Tatsumi

医師。ひざのスーパードクター。1960年生まれ。静岡県立薬科大学薬学部卒業後、大阪市立大学医学部に入学。卒業後は同附属病院整形外科に入局し手術三昧の日々を送りながら、米国(メイヨー・クリニック)と英国(オックスフォード大学整形外科留学)などに学び、世界最先端の技術を体得。日本屈指の技術と、患者の立場に立った診療方針で全国各地から人が絶えない。評判の手術の腕の一方で「すぐには切らない」医師として話題を集める。湘南鎌倉総合病院人工膝関節センター長を15年務めた後、2020年より一宮西病院人工関節センター長に。

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