「ひざの不調」70代女性の7割が悩む病気の正体 変形性膝関節症の原因と対策を専門医が徹底解説

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「体重減」と「筋力アップ」は大事な視点です。でもこれだけでは、そもそもの原因である「軟骨が減ったこと」は補えません。また痛み止めを飲んでも軟骨が増えることはありません。逆に痛み止めを多用して動き回ると、さらに軟骨がすり減ることになります。

やがて症状が悪化し、大腿骨と脛骨(けいこつ)が直接当たるようになると、人工関節に入れ換える「手術」などが提案されます。僕たちの人工関節センターを受診に来られる患者さんたちの、9割がこの状況の人たちです。「前の先生からは手術と言われたのですが、本当に手術しなくても治るのでしょうか?」と半信半疑の顔です。

けれど本来、ひざは正しく使っていれば108年はもつ構造体です。

「老化」とは別に、軟骨が減る原因があるはず。それを突き止めなくてはなりません。

108歳まで元気に歩ける人もいれば70歳で車イスが必要な人もいる。僕は患者さんと一緒に「老化以外の原因」を考え続けてきました。

そして見つけた答えはシンプルなものでした。

簡単にいえば、ひざの負担を大きくしている生活習慣があり、軟骨のメンテナンスも不十分。そこに老化が加わることで、軟骨が加速度をつけてなくなってしまうケースがほとんど――ということです。

軟骨が減ると痛いのは「微小骨折」が繰り返されるから!

ひざの痛みは、軟骨の有無が大きく関係していると説明しました。

みなさんが1歩踏み出すそのとき、ひざにどれくらいの負担がかかると思いますか?

その負担は「平地を歩くときは体重の5倍」「階段を降りるときには体重の8倍」の力にもなると報告されています。自分の体重を思い浮かべて、ちょっと計算してみましょう。

体重50kgの人が平地に踏み出したら、250kg!

体重60kgの人が階段を降りるときには、480kg!

軟骨というクッションのおかげで、この力が直接大腿骨と脛骨にかかることはありません。このクッション構造こそが、ひざの関節が体重の数倍もの衝撃をもろともせず、歩行や活動を可能にしているものです。

僕はよく患者さんにこんなたとえ話で説明しています。硬い組織である骨を「陶器でできたお茶碗」にたとえます。もし、2つのお茶碗を直接ガチャンと重ねたら? ひび割れてしまいますね。しかし、お茶碗とお茶碗の間に濡れた布巾をはさんでおいたらどうでしょうか? きっと割れにくい。この布巾と同じはたらきをしてくれるのが軟骨なのです。

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