これまでU-NEXTはNHKから民放まで各テレビ局と割とまんべんなく接していたように見え、実際、独立系動画配信サービスとしてどの色にも染まっていないのが良さでもありました。一方で、アダルトコンテンツを展開しているイメージも強く、それが会員数獲得と継続の強みとなってはいたものの、ブランドとしては弱みでもありました。臆測にすぎませんが、そこから脱却を図る過程の中でマーケティング力を強めるためにTBSの力を借りたかったように思います。
つい、そんな事情を探りたくもなりますが、U-NEXTは国内勢の動画配信サービスの中で最も勢いがあることは断言できます。36万本以上と作品数が群を抜いて多く、品揃えの定評も確かなもので、ポイントで作品レンタルや映画館クーポンが利用できるなど、痒い所に手が届くあたりも巧みです。有料会員数は6月30日の公式発表によると385万⼈ですから、ディズニープラスやHuluを上回ります。TBSとの関係を深めて、新生U-NEXTとしてさらなる高みを目指しています。
1人当たりの平均契約数は「1.7」
ディズニープラスもHuluもU-NEXTもそれぞれの新たな展開を見る限りは強気ですが、切実な事情を抱えてもいるのです。ユーザーから選ばれるサービスになるには、そう簡単ではありません。
定額制の動画配信サービスを利用する1人当たりの平均契約数は「1.7」です。これは日本の動画配信市場を調査したアンペア・アナリシスが今年3月に発表した数字によるもので、サービス事業者からみると、2つに満たない椅子の奪い合いが行われていることを意味します。動画配信サービス事業者の数は軽く10を超え、外資系の新規参入はまだ続いていくことが予想され、ライバル多数のなか、厳しい争いを強いられています。
メディア・パートナーズ・アジアの調査数字によると、2022年末時点で、日本ではAmazonプライム・ビデオが1600万人以上とトップを走り、続いてNetflix が720万人で2番手の位置につけています。価格面で圧倒的にお得なAmazonの利用者が最も多いのは納得できるもので、話題性のあるオリジナルコンテンツを抱えるNetflixが2番手であるのも想定内です。
少々驚くのは、Amazonプライム・ビデオとNetflixの2つのサービスだけで動画配信サービス全契約数の約半数を占めていることです。それゆえに「平均1.7」の内訳は「とりあえずアマプラかネトフリか」または「アマプラとネトフリ」、もしくは「アマプラと何か」「ネトフリと何か」である可能性が高いのです。
どのサービスも一番に選ばれることは目指してはいるものの、現実的には3番手グループはその「何か」に入ることが必須条件です。3番手にはU-NEXTにディズニープラス、Hulu、そしてスポーツのDAZNもいます。TBSとの連携強化やセットプランが果たして効き目を持つのか。究極は見たいコンテンツがあるかどうかに変わりありませんが、定額制の動画配信サービスが新たな局面を迎えているのは確かです。
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