世界の企業が注目する「拡大するシングル市場」 割高な「おひとりさま料金」を廃止した旅行会社

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マーケティング戦略立案者のなかには、さらに進んだ考え方をする人たちもおり、アメリカ・マーケティング協会は企業に対して、カップルを対象にした主流のマーケティングにニッチ市場を形成するべく、バレンタインデーに直接、シングルをターゲットにしたマーケティングをおこなうことを推奨している。

もちろん、このようなマーケティング戦略は、利益を上げることを目的としているが、同時に、ネガティブなステレオタイプはよくないという意識の高まりをあらわすものでもある。

その結果、自信に満ちた結婚していない人物たちが、待望のマーケット広告に登場するようになり、シングルの人たちが、もっと明るい光を浴びた姿であらわれることになる。そうなれば、未来のシングルの人たちが差別を経験したり、ステレオタイプを押しつけられたりすることも減り、社会的にもきちんと認められるようになることだろう。

シングルの中でも異なる「消費習慣」

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当然のことながら、結婚しているかどうかの違いと消費習慣との関係は、シングルの人たちのなかでも、それぞれのグループによって異なる。たとえば、個人主義的で、楽しみを求める傾向が強いと考えられている、自らの選択でシングルでいる人たち、つまり、「ニューシングル」の場合は、ほかの人たちより多く、娯楽やレジャーにお金を使うかもしれない。

一方、なりゆきの結果でシングルでいる人たち、特に離婚や、配偶者との死別によってシングルになった人たちの場合は、経済的な制約のせいで、それほど自由にお金を使えないかもしれない。

とはいえ、その違いはこれまでほとんど調査されてこなかった。今こそ、その研究をすべきときがきたといえるかもしれない。そのような研究がおこなわれれば、企業にとっても、社会全体にとっても、シングル人口のなかの多様なグループを、より包括的に理解する助けになるだろう。

エルヤキム・キスレフ 社会学者

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えるやきむ きすれふ / Elyakim Kislev

イスラエル・ヘブライ大学の公共政策・政府学部で教鞭を執る。マイノリティー、社会政策、シングル研究が専門。米国コロンビア大学で社会学の博士号を取得したほか、カウンセリング、公共政策、社会学の3つの修士号を有する。リーダーシップ、移住、社会・教育政策、エスニック・マイノリティー、グループ・セラピー、シングルなどのテーマで、多くの記事・書籍を執筆・編纂している。

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