RAV4&ハリアー、21世紀を予見したSUVの先駆者 「なんちゃってクロカン」と揶揄された過去も

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毎日のように、過酷な悪路を走るような使い方であれば、ラダーフレーム構造のクロカン的なクルマが必要だろう。しかし、乗用車と同じように街中で使うのであれば、フレーム構造はあきらかにオーバースペックだ。RAV4とハリアーは、実に理にかなったつくりであると言える。

では、「なんちゃってクロカン」と揶揄されたRAV4とハリアーが生まれてから、世の中はどのようになったのだろうか。それは市場が答えてくれている。

セルシオやアリストなど上級セダンに匹敵する質感を持つハリアーのインテリア(写真:トヨタ自動車)

RAV4誕生の翌年、ホンダはライトクロカンと称した「CR-V」を発売しているし、日産は「エクストレイル」を投入。

ハリアー(北米ではレクサス「RX」として販売)が新しい高級車としてヒットすると、メルセデス・ベンツは「Mクラス」、BMWは「X5」を発売したし、スポーツカー専門メーカーであるポルシェが「カイエン」を発表したときには、世界中が驚かされた。

『それ以降』、世界がSUVブームに向かい、ブームを越えて定番となっているのは、発売されている車種の多さを見ればわかるだろう。

ハリアーには本革シート仕様も用意された(写真:トヨタ自動車)

2022年度の国内ベストセラー50位までにランクインした21のSUVのうち、ラダーフレーム構造を使っているのは、先に挙げたランドクルーザーとジムニー(シエラ)の2モデルのみだ。

しかし、ラダーフレーム構造を持つクロカン4WDが絶滅したわけではない。もともと、クロカン的な使われ方のニーズは一定数あったし、今もある。しかし、決して大きな市場ではないため、それ以上には伸びない。RAV4とハリアーと投入したトヨタは、それを予見していたかのようだ。

バブル崩壊後の気運の中で

当初は「なんちゃってクロカン」と揶揄された、クロカン4WD風の乗用車。しかし、その使い勝手や見栄えの良さから市場は拡大し、SUV/クロスオーバーという名前を得て、新たなジャンルを確立することに成功した。

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時はバブル崩壊直後の1990年代。新たな時代を迎える中で、自動車業界もさまざまなチャレンジを行った時期だ。そんな中で生まれ、25年以上が経った今も人気車種であり続けているのが、RAV4とハリアーである。まさに、21世紀を予見していたクルマだったと言えるのではないか――。

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鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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