そんな時代となる1990年代に、RAV4とハリアーは登場する。1994年に発売されたRAV4は、「多様な用途に応えるフレキシブル ビークル誕生」とうたった。「オンロードでもオフロードでも楽しめるたしかな走り」と説明する。
つまり、見た目はクロカンなのに、オンロード(舗装路)=街中を走る、と言ったのだ。これには、驚かされた。
そして、1997年にデビューしたハリアーは、さらに驚愕であった。クロカンなのに、「新ジャンルの高級車」として「スポーツユーティリティサルーン誕生」と宣言したのだ。
SUVは「スポーツ・ユーティリティ・ビークル」のこと。まさに初代ハリアーは、21世紀のSUVの隆盛を予見するかのような登場であったのだ。
とはいえ当時、クロカンは「悪路をゆくタフなクルマ」というのが常識であった。それに対して、乗用車と同じモノコック構造で「街乗り」をうたうRAV4とハリアーには、「なんちゃってクロカン」との侮蔑的な呼び名が使われた。
「なんちゃって」とは、1970年代後半に流行った言葉で、冗談をごまかすためにも使われたが、「なんちゃってクロカン」に関しては、「見た目だけクロカンの偽物である」との文脈で使われることが多かったのだ。
「なんちゃって」だからこその美点
実際に、2車種はオフロード走行が苦手だ。そういう意味では、「なんちゃって」なのであるが、それはオンロードでの走行を重視したためでウィークポイントではない。むしろ、RAV4とハリアーにはラダーフレーム構造の古式ゆかしいクロカン4WDにはない美点が、備わっていた。それは「軽さ」だ。
モノコック構造は、乗用車と同じように薄い鉄板を箱型にしてボディ骨格をつくる。一方のラダーフレーム構造は、トラックやバスのように、ハシゴ型のフレームにエンジンやサスペンションが装着され、その上に箱型の車体(キャビン)を載せている。
鉄板で箱型のキャビンを構成するのはモノコック構造と同じだが、ラダーフレーム構造はキャビンの下に強固なハシゴ型のフレームがある。
丈夫ではあるけれど、フレームがある分だけ、重量はどうしてもかさんでしまう。重量がかさめば、それに対応するためエンジンも大きくする必要があるし、サスペンションも重いものを支えるために硬くなる。
一方、モノコック構造は、ボディが軽いから小さなエンジンでもよく走るし、足回りも柔らかくできる。その結果、モノコックボディの方が軽快に走り、燃費にも寄与、そして何よりも乗り心地が良くなるのだ。
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