「生成AI」登場でキャリアに過去最大級の好機到来 「世界にリセットがかかった」【澤円×木内翔大】
木内:今後、生成AIが誰でも使えるビジネスツールになるのは間違いありませんが、スキルの可視化が進まないことには、採用や人事評価に反映することは難しい。
協会として、いわばAIリテラシーの業界標準を定義することによって、企業におけるAI教育や個人のスキルアップを進めていく上で大きな助けになるはずで、僕自身もそこに深く共感しています。
今後はIT教育に携わってきた私自身の経験を踏まえて、日本のAIシフトを加速させていく活動に、貢献していきたい。それが今の思いですね。
澤:僕もGUGAから声を掛けていただいた時に、二つの点で自分の経験を生かせるのではないかと考えました。
一つは、パワーバランスの偏りの問題です。
日本のIT人材は約7割がベンダー側にいると言われます。つまりITを語るときに7割がセールストークになり、事業者側にそれを理解できる人材が少ないということ。
僕自身はITを売るベンダー側にいながら、啓蒙するという仕事をメインにしており、一歩引いた形で業界全体を見ていたので、ずっとこの状況はまずいと思っていました。
だからこそ、協会という第三者的な立場で、AIの普及と活用を進めていくことに意義を感じています。
もう一つ、サイバークライムセンターのセンター長をやっていた経験から、セキュリティーの問題も非常に重要だと考えています。
これまでは、フィッシングメールなどで自然な日本語を書くのが難しかったことから、日本は人為的なハッキングが非常に難しい国とされてきました。
ところが、生成AIで自然な日本語が作れるようになると、完全にその牙城が崩れてしまう。
もちろん防御にもAIを活用できると思いますし、何よりも多くの人がAIリテラシーを持つことは、セキュリティーの観点からも非常に重要になっていると思います。
生成AIを使う「目的」と「手段」をセットで考える
——生成AIを今後より良いかたちで社会実装していくために、エンジニアに意識してもらいたいことは?
澤:今回の生成AIに限った話ではないのですが、何か新しい技術やバズワードが登場したときに最も大切なのは、主語を間違えないことですね。
例えば、旅行に行くときに荷造りが得意な人と苦手な人の違いは何か。苦手な人は「旅行には何が必要か」考えるのに対して、得意な人は「私は旅先で何をしようか」を考える。
やりたいこと、つまり目的に合わせた荷造りをすれば、自然と必要最低限のものをコンパクトにまとめることができます。