キーウの書店本棚から撤去されたロシア語書籍 ソ連批判作家の記念館にも「脱ロシア化」の矛先

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数学、科学技術関係でウクライナ語の語彙は未だ貧弱で、よい本は少ないという。

ロシア語の高等数学の本を示すヴィチェーズィンさん
高等数学の本を示すヴィチューズィンさん(筆者撮影)

ヴィチューズィンさんは「こんな高等数学の本はウクライナ語書籍にはない」と言いながら、一冊の本を筆者に示した。

ヴィチューズィンさんは、技術者としての教育を受けたが、ソ連崩壊で技術者になることをあきらめ、いろいろな職業を転々とした後、13年前に古本屋を開いた。

ロシア語書籍への姿勢は、受けた教育や世代により大きな違いがあるようだ。

ヴィチューズィンさんはロシア語書籍が廃棄される現状について、「理解はできるが、敵のことはよく知らねばならない。敵の顔を知っているが、言葉を知らないのは問題だ」と、批判的な様子がうかがえた。

「ソ連体制批判」から「反ウクライナ」へ評価が反転

キーウの観光名所でもあるアンドリー坂の中ほどのところにある「ブルガーコフ記念館」は、「文化闘争」のもう一つの舞台だ。

アンドリー坂にあるブルガーコフ記念館
アンドリー坂にあるブルガーコフ記念館(筆者撮影)

ブルガーコフはキーウ生まれの20世紀を代表するロシア人作家。医者としてロシア革命後の内戦期のウクライナを生き、その体験をもとにした『白衛軍』や、ソ連体制への批判に満ちた幻想小説『巨匠とマルガリータ』などの作品で知られる。

多くの作品がソ連体制下では出版できず、『巨匠とマルガリータ』が完全な形で出版されたのは、冷戦末期の1989年だった。

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