私が、「日本でも親しまれているトルストイやドストエフスキーなどロシア文学の巨匠の作品が廃棄されるのは残念だ」と言うと、ハゾヴァさんは、「ロシアは今ウクライナに対してジェノサイドを行っている。ウクライナのほとんどの家庭に、死んだり、傷ついたりする人がいて、苦しんでいる。息子を失った母親がロシア語の本を読もうと思うだろうか」と強く反論した。
「キャンペーンはウクライナ文化を守るため。ロシアはウクライナの本、図書館、博物館を破壊している。ロシア文化に場所を与えることには意味がない。われわれは血を流して自分の文化を防衛している」とハゾヴァさん。
こうした強い立場を打ち出すのは、「公営書店」の性格もあるかもしれない。マレッチさんによると、個人書店は品ぞろえの20%まで外国書籍にしてよいと決まっているという。
ロシア語書籍ばかりの古本屋
他の書店がどうなっているのか、取材する時間はなかったが、近くにロシア語の本を主に扱っている古本屋があると聞き、行ってみた。
「ペチェールスカの古本屋」は、地下のショッピングモールに店を構えていた。書棚にぎっしり並んでいるのはほとんどがロシア語の古本だ。
店主のセルヒー・ヴィチューズィンさん(58歳)は、「ロシア語の本を売るな、といった圧力はまったくない。その手の人の知性は低いから、本など読まないからだ。ただ、侵略開始以来、ほとんど売れなくなってしまった。ロシア語の本を読む人間はほとんどウクライナから出国した」と話す。
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