「認知症の母」施設に入れるタイミングを知りたい 「生活に慣れるには早めがいい?」悩む50代女性

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一口に施設といっても、表のようにさまざまな種類があり、民間施設と公的施設でも異なります。本人に合った施設を選ぶためには、まずはケアマネジャーなどに相談のうえ、どんな施設が入居条件に当てはまるのかなどを検討するところから始めてもいいかもしれません。

本人の希望も踏まえて、ある程度候補が絞られたら、お母様と一緒にいくつかの施設に見学に行ってみて、どんな施設が良いのか話していきましょう。

時折、施設に預けることに対して罪悪感を持たれるご家族の姿を目にすることがありますが、例えば同世代との交流や、レクリエーションを通じた楽しみなど、施設ならではの良さもあります。

もしお母様に、施設に移ることを提案されづらいようでしたら、身近な介護者や医療者に協力を仰ぐのも1つの方法です。第三者からの客観的な意見があることで、お互いに気持ちを固めやすい場合もあります。ただし、最終的に預けるかどうかは、ご家族自身が感じる負担感で判断することが大切です。

施設入居には理解と覚悟が必要

最後に、施設に預けるときには、ある程度の理解と覚悟が必要です。先ほどの娘さんの例ですが、母親が通っていたデイサービスの施設から通所を断られる事態が起こりました。母親につきっきりで介護をしていた期間もある娘さんは、お母様のふとした表情で、便意や尿意をもよおしたことが分かります。

そんな娘さんは、お母様がデイサービスでオムツを汚すたびに「もっとちゃんと母親を見てほしい」「オムツを汚す前に、トイレに行きたいことを察してほしい」と、施設に対して何度となく意見していて、それで通所を断られてしまったようでした。

施設には多くの専門のスタッフがいますが、入居している人もたくさんいて、1人ひとりに対して、娘さんが求めるほどの細やかなケアができるわけではありません。

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預ける際には、施設側が“できること・できないこと”を理解したうえで、ある程度任せるという覚悟も必要です。そのあたりでうまく折り合いをつけながら、お母様やご家族の希望に合う施設が選べたらいいですね。

介護している側に負担がかかり過ぎてしまうのは、お互いにとって良くありません。支える家族側の人生も大切にしてほしいと思います。ご自分の人生も大切にしながら、お母様とK.Hさんにとって良い選択ができるよう願っています。

(構成:ライター・松岡かすみ)

本連載「がんでも認知症でも『在宅ケア』のすすめ」では、ご家族の在宅ケア、介護のお悩みを受け付けております。お悩み相談は、こちらのフォームよりお願いします。
中村 明澄 向日葵クリニック院長 在宅医療専門医 緩和医療専門医 家庭医療専門医

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なかむら あすみ / Asumi Nakamura

2000年、東京女子医科大学卒業。国立病院機構東京医療センター総合内科、筑波大学附属病院総合診療科を経て、2012年8月より千葉市の在宅医療を担う向日葵ホームクリニックを継承。2017年11月より千葉県八千代市に移転し「向日葵クリニック」として新規開業。訪問看護ステーション「向日葵ナースステーション」・緩和ケアの専門施設「メディカルホームKuKuRu」を併設。病院、特別支援学校、高齢者の福祉施設などで、ミュージカルの上演をしているNPO法人キャトル・リーフも理事長として運営。近著に『在宅医が伝えたい 「幸せな最期」を過ごすために大切な21のこと』(講談社+α新書)。

 

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