一方の順二さんはひたすらに優しく、雅代さんが手配したデートプランを一緒に回ってくれる男性だ。見下されていら立つようなことはない。
ある夜、順二さんは通勤用のリュックサックに仕事の資料を背負ったまま登場した。残業帰りだという。
「散々歩かせた後にリュックを持ってみたらすごく重くてびっくりしました。それなのに彼は一言も文句を言わずに私の後を嬉しそうについてきたんです……」
自分の意外な長所や美徳を気づかせてくれる人こそ
順二さんには姉と兄がいて、その姉と雅代さんの雰囲気が似ているらしい。長女の共通点なのかもしれない。次男にして末っ子の順二さんは雅代さんの「自分とは違って明るくて前向きなところ」を尊敬しているようだ。年上だからといってリーダーシップを発揮するとは限らない。
筋書き通りに誕生日にプロポーズしてもらい、20年以上前のトラウマを払拭した雅代さん。結婚生活でも主導権を握り続けている。
「生活費はすべて折半で、それぞれローンを組んで購入したマンションは共同所有です。家事は私がやっていますが、夫は頼めば何でもやってくれます。私が帰ってくると、〇〇をやったよ!と嬉しそうに報告してくれるんです」
雅代さんは姉のような母のような笑顔で新婚生活を描写してくれる。婚約をする前に子宮がん検診にひっかかり、子宮を摘出する決断をした。順二さんはちゃんと向き合って結婚に進んでくれた。
「5年前に結婚した私の妹には子どもがいて、いいなあと思っていました。子どもがいない人生を送ることは想像していなかったのですが、今はそれでも幸せになろうと思っています」
精力的な実業家である父親に長く憧れてきた雅代さん。結婚相手の男性にも同じものを求めてきたが、人生経験と良きコーチによって自分自身の中に父親に似た力が備わっていることに気づいた。そして選んだのは、自分には少ない可愛げを持った男性だった。
雅代さんは以前より肩の力が抜けているはずだ。だけど、精神的に安定して力強さは増しているのだろう。自分が持つ意外な長所や美徳を気づかせてくれる人こそ、結婚相手としてふさわしいのかもしれない。
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