EV充電つけたのに「停められない」思わぬ落とし穴 マンションの管理組合を悩ませるいくつもの難題

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一方、マンションの立体駐車場へのEV充電設備設置については、国や自治体からの補助金の活用も期待できる。国は2035年までに新車販売をすべて電動車<電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)>にすると宣言しており、普及に向け充電インフラ導入補助金の支給を行っている。地方自治体も同様に、充電設備設置への補助金などさまざまな支援制度を整備している。

中でも東京都は、2025年4月より、駐車台数の2割以上の充電設備の設置を義務化するなど踏み込んだ施策が話題となったばかりだ。既存マンションで充電設備設置をお考えなら、補助金の利用は大きな好機と言っていい。

機械式駐車場は今後、計画的な対応が求められる

とはいえ先ほどお伝えしたとおり、EV、PHVの乗用車販売台数全体に占める割合は2022年の段階で約3.1%にとどまっている。まだまだ普及途上にある中、「充電設備のあるマンション」にそれほど大きな付加価値が及ぶとは考えにくい。

しかし将来的に高い伸び率が今後も継続する可能性は高く、EVやPHVの普及が進んでいくと共に、そのマンションの資産価値に与える影響は大きくなっていくはずだ。

マンションの駐車場といえば昨今、機械式駐車場のあり方が大きな問題となってきている。過剰に建築された過去と今では、車に対するニーズに大きな差異があるためだ。車の大きさ、高さが制限されるため、駐車できる車が限られること、そもそも車を所持しない世帯も増加している。駐車場の空きが増えているのも、当然のことかもしれない。

そのうえ、維持管理に伴う赤字、老朽化に伴う更新費用不足などが多くのマンションで発生し、今や社会問題といってもいいほどだ。つい先日も総戸数500戸規模のマンションで機械式駐車場の10年間の修繕費試算が5億円を超えてしまうとの相談を受けたばかりだ。

このような現状を鑑みても、マンションの駐車場は今後も減少、縮小の方向へと向かっていることは間違いない。何かと疎まれる機械式駐車場ではあるが、都心部においてはまだまだ駐車場の価値は高いと考える声も聞かれる。

例えば駐車場が複数台利用可能な分譲マンションは売り主にとって好条件で売買契約が成立したという事例もある。そもそもマンションの駐車場は、マンションの規模(延べ床面積)に見合った台数を設置することが附置義務として条例などで定められてきた。

しかし、駐車場の利用率が低下する中、附置率の緩和を進める自治体も出てきた。充電設備の設置を含め、マンションと駐車場のあり方について、あらためて考える時期が来ている。自分たちのマンションの立地や周辺事情、居住者の意見やニーズなども取り入れ、修繕計画について早めの準備が必要になるだろう。

長嶋 修 不動産コンサルタント(さくら事務所 会長)

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ながしま おさむ / Osamu Nagashima

1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『株式会社さくら事務所』を設立、現会長。以降、さまざまな活動を通して“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”第一人者としての地位を築いた。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任している。主な著書に、『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)、『「マイホームの常識」にだまされるな!知らないと損する新常識80』(朝日新聞出版)、『これから3年不動産とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)など。さくら事務所公式HPはこちら
 

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