「EV充電器」マンション導入への高すぎるハードル 難しい合意形成、EV普及の壁になる可能性も

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充電インフラの普及なしにEVの本格的な普及は考えられない(写真:brookbrook /PIXTA)

都内に住む50代の自営業の男性は昨年、雑誌で一目ぼれしたEV(電気自動車)を購入した。しかし、実際に使ってみると、ガソリン車に比べて煩わしいと思う点がある。充電の問題だ。

男性が住むマンションにはEV用の充電設備がないため、普段は急速充電器がある近くの自治体の役所に立ち寄って、充電しているという。急速充電とは言っても、100kmほど走るだけの電気を充電するには30分近い時間がかかる。

仕事とプライベートで毎日車を使うため、4日に1回は充電する必要があり、それが非常に面倒だ。「自宅のマンションに充電器がありさえすれば、こんなに無駄な時間を費やさずに済むんだが」と男性は嘆く。

充電器の設置数を10年で5倍に

カーボンニュートラルに向け、世の中では「本格的なEV時代の到来」が叫ばれている。日系自動車メーカーも電動化の目標を相次いで発表し、EVの販売に本腰を入れ始めた。しかし、充電インフラの普及なしにEVの本格的な普及はありえない。

地図情報大手のゼンリンによると、2020年度末時点で導入済みの充電器は全国でまだ2万9000基ほどに過ぎない。そこで経済産業省は2021年に発表したグリーン成長戦略の中で、その数を2030年までに5倍の15万基にまで増やす目標を掲げている。

ここで言うEV用の充電設備は大きく分けて2種類ある。まず1つ目は、出力が高く、短い充電時間で済む急速充電器。もう1つは出力が低めで、充電時間が長い普通充電器だ。

前者は導入コストが工事費込みで1区画あたり少なくとも300万円近くかかり、主にパーキングエリアなど業務用の充電ステーションで導入されるケースが多い。一方、後者は主に住居といった停車時間が長い場所での使用を念頭に置いたものだ。

経産省の目標では、2030年までにこの普通充電設備を12万基にまで増やす計画になっている。自宅に専用の充電設備があれば、夜間など自宅にいる間にフル充電でき、よほど遠出をしない限りは出先で困ることもない。

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