国の健康保険制度が充実している日本では、これまで民間保険会社の医療保険の出る幕はありませんでした。これは国民にとって、大変幸せなことでした。しかし、この幸福な状態がいつまでも続くとは考えられません。現在の恵まれた制度が維持できているのは、巨額の税金が投入されているからです。今後も制度が破たんすることはありませんが、現在の財政状況を考えると、今のような手厚い給付水準が維持できるとは考えられません。
医療費の給付が引き下げられれば、そこに民間の医療保険の存在意義が生じます。いよいよ本当に、「治療費」を保障するホンモノの医療保険の出番です。その意味で、今後は民間保険会社の医療保険分野で果たす役割は重要です。保険会社は現在のような医療保険モドキを売っている場合ではありません。今や、ホンモノの医療保険を開発すべきときなのです。
これからの医療保険を考える3つのキーワード
1つ目は、本当に「治療費」そのものを保障する保険です。健康保険制度の給付水準が引き下げられ患者の自己負担額が増えてくれば、そこを保障する医療保険が必要となってきます。これまでのような「差額ベッド代」や「収入を保障」する医療保険モドキでない保険です。
2つ目は、先ほどの「入院が半年を過ぎれば、それ以降はずっと保障される」ような発想の保険です(保険業界では「ストップロス」と呼ばれます)。保険会社が利用する保険(再保険と呼ばれます)や大企業のかける保険は、ほとんどがこのタイプです。日本の医療保険もこの視点での商品開発が期待されます。
3つ目が「現物給付」の考え方です。医療は、治療費の経済的負担問題に加えて、受ける治療内容の「質」が大きな問題です。どこの病院で、どのような治療を受けるのがよいか、という点です。現物給付とは、要した医療費を保険会社が「現金」で負担するというものではなく、保険加入者に医療サービスそのものを「現物」で提供する考え方です。実は日本の健康保険制度は現物給付ということになります。保険加入者は直接病院に出向き、そこで医療サービスという現物給付を受けているわけです。
米国では、民間保険会社の医療保険もほとんどが現物給付です。保険会社が管理運営する医療機関・病院ネットワークに保険料を払って加入するのが、米国の医療保険の仕組みです。病気になると、まずは保険会社に自分の病状を説明し相談します。次に保険会社のアドバイスに従って最適なクリニック、適切な病院で治療サービスを受けます。この一連の医療サービスが保険で提供されます(自己負担分は払います)。
ですから、保険会社に求められるノウハウもすっかり変わってきます。従来の保険的ノウハウに加えて、いかに質のいい医療サービスを提供できるか、いかに効率のよい医療経営をできるか。いわば病院経営のノウハウが必須となってくるからです。
ホンモノの医療保険が求められる時代がすぐそこまで来ているのです。
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