世界で大流行する「やせ薬」は本当に悪者なのか 「GLP1ダイエット」は科学的にアリかナシか
もう1つの問題が、添付文書に記載されている「適応」だ。
実は、もともと減量効果が注目されたGLP-1作動薬「オゼンピック」(週1回の皮下注射)や「リベルサス」(1日1回の錠剤)は、2型糖尿病薬としてしか国内承認されていない。そこから、「やせる必要のない人が美容を目的としたダイエットに使っている」という批判が生まれてしまった。
しかも日本医師会も、糖尿病治療以外の適応外使用は厳に慎むべき、そんな薬を処方する行為は「医の倫理に反する」との見解を発表している。
ところが、「オゼンピック」「リベルサス」と同じ成分の「ウゴービ」という薬が、肥満治療薬として今年3月に薬事承認されている。要するに、医師が責任を持って用法や用量を管理・指導し、正しく使えば、ラベルはなんであれオゼンピックもリベルサスも、有効な減量薬そのものに違いないのだ。
厚労省他の声明は、ともすると「違法な薬を投与して患者を害しかねない」といった誤った印象を人々に与えるものだ。だが実際、同一成分を「減量薬」として承認したのは、ほかならない厚労省である。いったいあの声明は誰のためのものなのだろう?
肥満を治療すれば「生活習慣病」も治る!
さて、私が医師として、GLP-1作動薬を使ってまで患者さんの減量を推すのは、当然、高価な薬を売りつけたいからでも何でもない(ヤブヘビか? 苦笑)。
肥満は立派な病気であり、なおかつ万病の元だからだ。
一般に肥満とは、BMI(体格指数)が、25以上の場合を言う。25を超えると脂質異常症や糖尿病、高血圧などの生活習慣病のリスクが2倍以上になり、30を超えると高度な肥満としてより積極的な減量治療を要するとされている。身長が160センチの人だったら、64キロ以上が肥満だが、積極的な減量が必要とされるのは76.8キロ以上となる。
といっても実際には、筋肉量が多く内臓脂肪が少ない人は、体重が重くても病的ではない。一方で、体重は軽いけれど筋肉が全然なく、お腹がぽっこり出ている人は、肥満ではないが病的だ。
このように、体重で十把一絡げに区切ることはナンセンス、というのが今や常識だ。近年は、BMIが25以上で、なおかつ脂肪肝や高血圧、高血糖値、悪玉コレステロール値が高いなど、いくつかの健康障害を伴う場合に「肥満症」と診断し、治療対象とするようになってきている。
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