世界で大流行する「やせ薬」は本当に悪者なのか 「GLP1ダイエット」は科学的にアリかナシか

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「低糖質ダイエット」はローカーボダイエットとも呼ばれ、米やパン、イモ類など炭水化物は極力摂らないようにしよう、というダイエット方法だ。ほかの食品、つまり野菜や肉などのタンパク質類は好きなだけ食べていい、とされている。今でも指導に取り入れているトレーナーやジムも珍しくない。

ただ、低糖質ダイエットは、動脈硬化、つまり血管の老化を促進することがわかっている。また、ボディービルダーの間でさえ、過度な糖質制限が逆効果であることは常識になりつつある。筋肉まで減らしてしまうのだ。足りない糖質を補おうと、筋肉中に貯蔵されていた糖質が消費され、さらには筋肉や脂肪を分解して糖を生成しようとするからだ。

やせて見栄えはよくなるし、食事制限の苦痛も少ないが、明らかに健康には結びついていない。医師としては推奨できない誤ったダイエット法と言える。

「間欠的絶食法」は、1日のうち8時間だけ食事を摂っていい(次の16時間は何も食べない)というシンプルなものだ。結局のところエネルギー摂取量が減ることがダイエット効果をもたらす。だが、慣れるまでにはそうとうの時間と覚悟が必要だ。空腹が続いて仕事に集中できなかったり、飲み会などが断れなかったり、現代人の生活では中断理由や誘惑が多すぎて、8時間ルールを守るのは至難の業だ。

要するに間欠的絶食法は、今ある生活スタイルの中で誰もが取り組めるものとは言いがたい。

GLP-1作動薬が患者さんにもたらした「気づき」

その点、「GLP-1ダイエット」は、医師の指導に基づいて正しく行えば、食事を我慢するストレスがなく、心血管や血糖値、脂質などすべての面において健康に結びつく。最も効果的かつ健康的なダイエット方法の1つと言っていいだろう。

何より、GLP-1作動薬が多くの患者さんに「気づき」をもたらしたことは、衝撃的だった。これまで私が医師としてお説教してみたり、優しく促したりしても、患者さんの行動変容にはほとんどつながらなかった。無力感と自省にさいなまれたが、GLP-1作動薬はいとも簡単にそれをやってのけたのだ。

薬をきっかけに患者さんの健康意識を高められる可能性がある──。今後の医療や医師の役割・あり方を考えるうえでも、おおいに示唆に富んでいる。

久住 英二 立川パークスクリニック院長

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くすみ えいじ / Eiji Kusumi

1999年新潟大学医学部卒業。内科専門医、血液専門医であり、旅行医学やワクチンに関する造詣が深い。国家公務員共済組合連合会虎の門病院で内科研修ののち、臍帯血移植など血液がんの治療に従事。血液内科医としての経験から感染症やワクチンにも詳しく、常に最新情報を集め、海外での感染症にも詳しい。2024年12月に立川高島屋SC10階に内科、小児科、皮膚科の複合クリニック「立川パークスクリニック」を開業した。

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