世界で大流行する「やせ薬」は本当に悪者なのか 「GLP1ダイエット」は科学的にアリかナシか

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肥満症自体は、エネルギーの過剰摂取によって体に脂肪が蓄積したものなので、脂肪を減らすことが根本的な治療だ。

他方、上記リストの大半を占める生活習慣病の治療は、これまでは高血圧に対して降圧薬、脂質異常にはコレステロールを下げる薬、糖尿病には血糖を下げる薬と、疾病ごとに治療がなされてきた。結果として、何種類もの薬を飲むことが必要とされ、「ポリファーマシー」が問題にもなっている。

だがこれまでの経験上、肥満そのものを解消することで、それらの生活習慣病まで根本的に改善されることが非常に多い。現に、私が治療してきた患者さんたちで、体重減少に成功した結果、脂肪肝や高コレステロールの治療薬、ほかの糖尿病の薬までも要らなくなった方が大勢いる。

つまりGLP-1作動薬を医師が吟味して適切に用いることで、肥満と同時に生活習慣病の根本的な治癒が望める、ということだ。

自力で減量できる人は極めて少ない

もう1つ、私がGLP-1作動薬の導入に積極的な理由がある。こうして医師として多くの患者さんにダイエット(減量)を勧めてきたものの、成功例は極端に少なかったからだ。

生活習慣病健診で引っかかった人には、特定保健指導がなされる。だが、厚労省の公表データを見ると、指導を受けても平均たった1キロ程度しか体重は減少しない。結局、健診では毎年のように異常を指摘されるが、「どうせ去年と同じでやせろという話になるだけだから、もう受診しない」ということになる。

ナビタスクリニック川崎でも、特定保健指導の範囲内で管理栄養士による栄養指導を行っているが、効果は芳しくない。診察で私が「体重はどうですか?」と問うと、ほとんどの患者さんが「先生すいません、減っていません」と謝られる。

私は責めているつもりはないのだが、医師の指導を守れない自分を、患者さんはどうしても責めてしまうようだ。毎回ギルティーマインドを抱いて受診するのは、さぞ苦痛なのであろう。通院が途切れる人も少なくない。

そもそもダイエットの「指導」といっても方法が決まっているわけではない。そこでさまざまなダイエット方法が試される。昔ながらの置き換えダイエットはもちろん、近頃だと低糖質ダイエット、間欠的絶食法あたりが話題を集めてきた。

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