【梅毒】10年で5倍にも「感染を防ぐ」6つのルール 地方での増加が顕著、増えている要因は?

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では、そのまま放置するとどうなるのか。実は、梅毒のしこりやリンパ節の腫れは、時間が経つと消えてしまうのが大きな特徴だ。しかし、これは治ったわけではなく、病気は水面下で少しずつ進行していく。

「3カ月ぐらい経つと再発して、口や手のひら、足のうらなど全身に、重症化した皮膚症状が表れます。そうなった場合は治療が難渋化します」(尾上医師)

もしそれが妊娠中であれば、死産・早産のリスクが高まるうえ、治療しなければ胎児の脳や脊髄、心臓、血管にダメージが及ぶ。WHO(世界保健機関)の報告では、梅毒感染した妊婦の死産・早産は世界で毎年30万人、未熟児、先天性の疾患を持つ子の出産は21万人だという。

早期診断・早期治療が重要

梅毒はしっかり治療すれば治る病気だ。感染がわかった場合、抗菌薬のペニシリンによる薬物治療を行う。ペニシリンアレルギーを持つ人や、妊婦などでペニシリンが使えない人は、別の抗菌薬が処方される。

治療期間は症状の進行にもよるが、感染初期の第1期(感染から3週間後)では2~4週間、第2期(3カ月後)では4~8週間、第3期以降(3年~10年以上)では8~12週間の服薬が必要になる。

2022年1月には、初期の梅毒に対してステルイズ(ベンジルペニシリンベンザチン水和物)という注射薬が健康保険で認められた。1回の筋肉注射で済み、抗菌薬の長期的な服用がいらないのが利点だ。

最後に、梅毒から自分や大切な人を守るにはどうすればいいのか。尾上医師への取材をまとめた。

「梅毒をはじめとする性感染症は交通事故と同じ。不用意であれば何回でも問題を起こします。再感染を防いで身を守るのはご自身の意識です」

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と尾上医師。最近は、結婚前の女性が妊娠・出産に影響のある疾患の有無を調べる「ブライダルチェック」や、新しいパートナーができたときに行う「節目検診」のため、医療機関を訪れる人が増えているそうで、それについては評価している。

自分だけではなく、パートナーや家族を守るために、感染を疑ったらすぐ検査を受け、陽性なら治療を受けること。そして何より安全・安心なセックスをするためには、コンドームを最初から最後まで、忘れずに使用することだ。

(取材・文/熊本 美加)

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」名誉院長
尾上泰彦医師
1969年、日本大学医学部卒。日本性感染症学会の功労会員を務め、厚生労働省のHIV研究に協力するなど、わが国における性感染症予防・治療を牽引。(財)性の健康医学財団(代議員)を務めた。著書に『アトラスでみる 外陰部疾患 プライベートパーツの診かた』(学研メディカル秀潤社)、『性感染症 プライベートゾ-ンの怖い医学』(角川新書)。
東洋経済オンライン医療取材チーム 記者・ライター

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