空港施設の「社長解任劇」、JALがつけた落とし前 国交省OB天下り介入で、古巣がまさかの「ノー」
関係者の話を総合すると、ANAHDとJALは乘田氏の選任に反対票を投じ、DBJは賛成をしたようだ。ANAHDの広報は、「人心を一新すべきと考えた」と反対票を投じた理由を説明する。
一方でJALは、賛成したか反対したかも含めて「コメントは差し控える」と口をつぐむ。業界には、自社OBに反対票を投じたJALの判断に対して、衝撃が走っている。
JALが乘田氏にノーを突きつけた理由として考えられるのは、国交省への「けじめ」である。それほど人事介入問題の余波は大きかったのだ。
まず今回の取締役人事でもわかるように、国交省は空港施設への天下りポストを失った。関連して、有力官僚が辞職に追いやられた。人事介入の直前、国交省の久保田雅晴航空局長が、元事務次官の本田氏らと会食を行い、利害関係にある民間事業者から接待を受けたことが発覚。久保田氏は懲戒処分を受け、7月に辞職する。
「乘田解任劇」は正しい選択だったのか
「久保田さんは本来事務次官になる可能性もある国交省のエースだった。国交省は相当不満を持っている」。元航空会社幹部はこう指摘する。
2022年12月、本田氏が山口副社長(当時)を社長へ昇格させるよう要求をした際、乘田氏は「当社は東証プライム上場会社として厳格なガバナンスを求められており、社長は指名委員会で選考することになっている」(独立検証委員会の報告書)と、その要請をはねつけた経緯がある。
一連の問題に落とし前をつけるために、JALは自社OBの乘田氏に反対票を投じざるをえなかった、というのが業界関係者の見方だ。
JALとしては早めの幕引きを図りたかった理由がほかにもある。国交省は、航空各社のドル箱路線である羽田空港の発着枠再配分を主導している。
5年に1度行われており、2020年の再配分でJALは3枠減枠された。次の再配分は、2025年となる予定だ。このタイミングで国交省から不興を買えば、2025年の再配分でさらに減枠される可能性もあるだろう。
人事介入問題を受け、4月に独立検証委員会から空港施設が受領した報告書には、同社の経営課題として、「真に経営マネジメント能力に長けた倫理観の高い経営トップを選任するだけでなく、企業価値を高めるために必要な資質を十分に備えた取締役を、透明性の高いプロセスを経て選任することが不可欠である」と記されている。
乘田氏は、国交省の人事介入問題にあたり、空港施設の独立性を重んじ、同省の要求を拒否した。「乘田解任劇」は株主にとって正しい選択だったのか。明確な説明が求められるだろう。
空港施設の株価・業績 は「四季報オンライン」で
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら