帝国ホテルが「悲願の京都」に開業する深い意味 東京本館の建て替えや30年ぶり新館で狙う客層

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1890年に開業し、その後2度の改築を経て現在にいたる帝国ホテル東京。この本館と隣接するタワー館は、2024年度から2036年度にかけて建て替えられる(撮影:梅谷秀司)
せきを切ったように押し寄せるインバウンド。彼らを囲い込むべく、ホテルは高級化路線を強化している。『週刊東洋経済』5月8日(月)発売号では「ホテル富裕層争奪戦」を特集。ブルガリホテルの全貌、帝国ホテルの逆襲、現場の人手不足や耐震改修が必要なホテルなど、ホテルの「光と影」をリポートする。
外資系のラグジュアリーホテルが出店攻勢を続ける中、元祖・御三家の一角である帝国ホテルは事業展開にアクセルを踏み込もうとしている。
2024年度から2036年度にかけて帝国ホテル東京の本館と隣接するタワー館を建て替え、念願だった京都にも新拠点を設ける。押し寄せるインバウンドの富裕層を取り込むことができるか。定保英弥社長を直撃した。

――コロナの影響はどれほど大きかったのでしょうか?

大きな打撃を受けた。これだけ長期間にわたって人の動きが止まってしまったことは、ここ20年を振り返ってみてもない。リーマンショックや東日本大震災などが起きた際にも半年ぐらい影響を受けたが、これだけ長期間に及んだのは、帝国ホテル約130年の歴史の中でもないかもしれない。

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(業界団体の)日本ホテル協会には、われわれも含めて約230社のホテルが加盟しているが、加盟ホテルのコロナ禍における2年間(2021年度と2022年度)の平均純損失は、コロナ前の10年間に稼いだ年間平均額(平均純利益)の42年分に相当する。

コロナ禍であらためて、ホテル業をこれからも続けてくためには、企業として財務基盤がしっかりして、安定した収入を得ることが大事だと認識した。帝国ホテルは1983年にタワー館を開業した。日本で初めての商業施設とオフィスとホテルの複合ビルだった。この年に不動産賃貸事業を始め、そこから現在まで安定した賃貸収入を得ることができているので、今でもなんとか体力が残っていて、無借金でこられた。

グローバルスタンダードの客室にする

――帝国ホテル東京の本館とタワー館は2024年度から2036年度にかけて建て替える計画です。

将来に向けてアクセルを踏み込んでいこうという意味を込めて、本館とタワー館の建て替えを2021年3月に発表した。

新しいタワー館(2030年度竣工予定)は安定した経営基盤、財務基盤を得る建物にする。いまよりも高いビルになる(現状の高さは129.1メートル、建て替え後は約230メートル)。賃貸オフィスと現在も好評のサービスアパートメント(長期滞在サービス)をいっそう充実した設備で展開し、加えて賃貸住宅(マンション)も提供する。建て替えの過程で、筆頭株主である三井不動産に土地の一部を売却し、その後共同で新タワーを建設する。

2036年度に完成する新しい本館は、客室を広くすることが建て替えの目的の1つだ。今の本館は1970年に竣工したのだが、この年には日本万国博覧会(大阪万博)が開催され、ジャンボジェットが飛び始めた時期でもあったので、ホテルの客室を増やしていかないといけない流れがあった。現在の本館に30~40平方メートルの部屋が多いのはそのためだ。

当時としては広かったが、いまのグローバルのスタンダードには合わない。新しい本館は最低でも50~60平方メートルの部屋をそろえていきたい。本館の部屋数は現在570だが、建て替え後はそれよりも少なくなるのではないか。

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