帝国ホテルが「悲願の京都」に開業する深い意味 東京本館の建て替えや30年ぶり新館で狙う客層
――今後のホテル運営で重視していくことは?
これからは質への転換を図っていく。人手不足を解消するためにも、効率的に稼げる体制をつくり、生産性を向上していく。
本館は建て替え後に(ひと部屋が広くなる一方で)部屋数が少なくなるので、スタッフがひと部屋ひと部屋に提供するサービスの質をあげることができる。かつ、適切な価格転嫁を進めながら、上昇基調にある運営コストを吸収していく。若い世代にホテル業界への興味を持ってもらうためにも、労働条件を改善していかなければならない。賃金水準の向上などに取り組みながら、サービスの質を上げていく。
(質の向上については)具体的には、コンシェルジュという接客のプロチームを拡充する。足元でも、外国人のお客さまが一気に戻ってきて、ロビーでの問い合わせが急増し、窓口は朝から列をなしていることも多い。今後はコンシェルジュの配置を厚くしていきたい。
――長期滞在用のサービスアパートを2021年から始めましたが、狙い通りの成果が出ているのでしょうか。
欧米の高級ホテルは長期滞在用の部屋を持っているので、そういうところを見学しながら、帝国ホテルでも将来は展開したいと考えていた。このかいわい(東京・日比谷周辺)には、サービスアパートがあるようでない。
コロナが発生して1年目の2020年に、「緊急事態宣言明けの営業再開に向けて、どのようなサービスを提供したらよいか」といったアイデアをスタッフに募った。すると、全従業員の半数以上から、合計で5000件を超える回答があった。その中に、サービスアパートのアイデアがあった。(以前から構想していたこともあり)将来につなげる意味合いで、事業として始めることにした。
2021年2月に一部客室(99室)でスタートして好評だったので、同12月にはサービス対象をタワー館の全約350部屋に拡張した。足元ではおよそ7割が埋まっている。ニーズはあるということがわかった。建て替え後の新しいタワーでも、100部屋前後でサービスアパートメントを展開したい。
次の世代の舞台作り
――2026年には京都の祇園に新ホテルを建設します。実に30年振りの新規開業です。
これも本館の建て替えと同様に、次の世代の舞台作り(成長戦略)の一環だ。「京都にいまさら投資するのはどうか」と社内でも異論があったが、京都は国際的にも有名な観光都市で優位性がゆるがない。結果的に、祇園といういい場所にホテルを開業することができることになった。
国の登録有形文化財である「弥栄(やさか)会館」の一部を保存活用した歴史・文化的価値のあるホテルで、難しい工事となるが、2026年春の開業に向けて着々と準備を進めている。
京都という土地柄、建物の高さ制限(計画地では12メートル)がある。本計画は地域の景観への配慮や計画の意義を評価いただき、弥栄会館と同じ高さ(31.5メートル)の特別許可をいただいたが、その規模からすると、客室は60部屋程度となる。