ニッチ市場の「長期滞在型ホテル」に集まる熱視線 外国人旅行客が殺到で新たな投資家層も参入

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コスモスイニシアが開発したアパートメントホテルのMIMARU。中長期的に滞在できる宿泊施設を手がけるホテル会社やデベロッパーが増えてきている。(写真:記者撮影)

自宅で暮らすように旅先に滞在できる宿泊施設。そんなアパートメントホテルという隙間市場がにわかに活気づいている。ホテル会社だけでなく、デベロッパーや機関投資家なども注目し始めており、新たにファンドを組成する動きも出てきた。

アパートメントホテルとは、家族などの3~4人以上の多人数グループが、中長期的に滞在できるような宿泊施設だ。客室の中には、調理器具完備のキッチンや冷蔵庫など、長期間の宿泊に必要な設備がある。海外では一般的な宿泊施設だが、日本ではまだ選択肢が限られている。

外国人旅行客は平均20泊

観光庁の「訪日外国人の消費動向」によれば、2022年の訪日外国人旅行客の平均泊数は20.2泊と長い。複数のホテル運営会社の関係者は、「ビジネス出張に長期休暇の家族が同伴するなど、訪日外国人旅行客の多人数・長期滞在ニーズがある」と話す。

一方で、「国内ホテルは1~2人程度の宿泊を前提とした客室が多く、多人数の宿泊ニーズに対応できているとは言いがたい」(都内のホテル運営会社の幹部)という声もあがる。

足元ではインバウンド需要が急速に戻ってきている。観光庁が発表している宿泊旅行統計調査によれば、2023年2月の外国人延べ宿泊者数は前年同月の28.8倍に当たる592万人(コロナ前である2019年2月比では36.2%減)だった。回復が進むインバウンド需要を取り込むべく、アパートメントホテルに注目するホテル会社が徐々に出始めている。

すでに外資系ホテル会社は、日本でもアパートメントホテルを展開している。シンガポールのホテル会社のアスコットは東京や京都、大阪、福岡などで「シタディーン」や「アスコット」などの5ブランドで合計21施設を運営している。2023年6月には、神奈川県でアパートメントホテル「シタディーンハーバーフロント横浜」(客室数242室)を開業予定だ。

またアメリカのホテル大手ハイアット ホテルズ コーポレーションも「ハイアット ハウス」のブランドでアパートメントホテルを展開。2024年2月には、東京都渋谷区で東急不動産が開発する大型複合施設「渋谷サクラステージ」において、「ハイアット ハウス 東京 渋谷」(客室数126室)を開業する計画だ。

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