ニッチ市場の「長期滞在型ホテル」に集まる熱視線 外国人旅行客が殺到で新たな投資家層も参入

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需要拡大を見据えてアパートメントホテルの開発に新規参入するデベロッパーも出てきた。2022年1月、三井不動産レジデンシャルは「オークウッドホテル&アパートメンツ麻布」(客室数171室)を開業。施設運営はアスコットのグループ会社であるオークウッドに委託する。

また2022年7月には、日鉄興和不動産がアパートメントホテル「& Here(アンドヒア)」の運営・開発事業参入を発表した。客室数145室の第1号物件は、2024年1月に東京都台東区上野で開業する計画だ。

ある不動産会社のベテラン社員は、「ホテルの開発実績があると、ホテルを持ちたい不動産オーナーにも有効な提案が可能だ。用地不足や価格高騰で物件仕入れが厳しい中でも、事業機会を獲得できるメリットがある」と指摘する。

利用者のおよそ9割が外国人旅行客

大和ハウス傘下のデベロッパーでマンション開発などを手がけるコスモスイニシアは、2017年からアパートメントホテル「MIMARU(ミマル)」の運営・開発を始めている。2023年3月末時点では、東京・大阪・京都で25施設(客室数は計1319室)が稼働しており、利用者のおよそ9割が外国人旅行客だという。4~6人程度の子連れ家族を主なターゲットとしており、ADR(客室平均単価)はおよそ3万円だという。

4~6人程度の子連れ家族を主なターゲットにしている。(写真:記者撮影)

同社のグループ会社でありホテル運営を担うコスモスホテルマネジメントの藤岡英樹社長は、「多人数のインバウンド向けホテルとして起案したが、ヒアリングした複数の国内ホテル運営会社の反応が鈍かったため、競合に先行して市場シェアが取れると判断した。今後は客室数3000室体制を目指したい」と語る。

少子高齢化で長期的には住宅需要の縮小が懸念される中、アパートメントホテルはコスモスイニシアにとって重要な成長事業だ。同社の髙智亮大朗社長は「住宅と違ってホテル市場は拡大が見込める。コロナ禍で大幅な赤字を計上しており、ホテル事業が業績に貢献するにはまだ時間がかかるものの、企業成長の牽引役にまで育てたい」と意気込む。

国内のグループ旅行需要を獲得するアパートメントホテルも出てきた。物流施設の開発などを手がける不動産会社の霞ヶ関キャピタルは、2019年からアパートメントホテル「FAV HOTEL(ファブ ホテル)」を観光地へのアクセスが良い地方都市などで展開している。実際の施設運営は各地のパートナー企業が担っており、霞ヶ関キャピタルはアパートメントホテルや、運営マニュアルなどのノウハウ、ホテル運営に必要な基幹システムを提供している。

客室面積は平均35平方メートル以上で、室料が2~3万円程度だ。主なターゲット層は4~6人程度のグループ利用を想定している。同社の河本幸士郎社長は、「国内のグループ旅行の需要を取り込めており、コロナ禍でもファブホテルはほとんどすべてが黒字だった」と胸を張る。

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