ニッチ市場の「長期滞在型ホテル」に集まる熱視線 外国人旅行客が殺到で新たな投資家層も参入

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霞ヶ関キャピタルは、2023年2月にアパートメントホテル10物件(総資産額は約135億円)を対象とした長期運用型の私募ファンドを組成した。2023年2月末時点での同社の合計総開発事業規模は約480億円(開発中案件11件、開業済案件9件)あり、「今後どんどん長期運用型ファンドを組成していきたい」と河本社長は意気込む。

FAV HOTEL広島平和大通りの客室。(写真:霞ヶ関キャピタル)

特徴的なのが損益分岐点の低さだ。ファブ ホテルのGOP(売上高営業粗利益)比率は6割程度と高く、損益分岐点も20%程度にまで抑えられている。霞ヶ関キャピタルの緒方秀和取締役は、「オペレーションを効率化することで、1~2人でホテルを運営できている。キャップレート(不動産利回り)の目安もおよそ5~6%と、収益性は高い。安定的な長期運用を選好する投資家からも好評だ」と語る。

新しい投資家層を開拓

不動産サービス大手CBREが2022年11月に日本を投資対象とする投資家に実施した調査によれば、「コア」「コアプラス」(安定した賃貸収入によるリターンを重視する投資スタイル)を選好する投資家は51%と過半を占めている。こうした投資家は、ホテル運営会社の売上変動の影響が大きいため、ホテル物件への投資にはあまり積極的ではなかった。

採算性を高めるとともに、国内旅行需要だけでも安定稼働する体制を構築したことで、従来はホテル投資をしてこなかったような新しい投資家層をファブホテルは開拓できている。

「国内外の投資家や事業会社からアパートメントホテル・ファンドへの出資の引き合いが増えている。パートナー企業から持ち込まれる開発案件も増えており、今後はリゾート型の宿泊施設など多角化も目指したい」(霞ヶ関キャピタルの緒方取締役)

「2022年末あたりから、インバウンド需要の回復を見据えた投資家や不動産会社から物件取得の引き合いが活発だ。投資意欲は高くアパートメントホテルは熱いニッチ市場になっている」とコスモスホテルマネジメントの藤岡社長は話す。ホテル需要の完全復活を見据えて、デベロッパーや機関投資家は商機を伺っている。

佃 陸生 東洋経済 記者

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つくだ りくお / Rikuo Tsukuda

不動産業界担当。オフィスビル、マンションなどの住宅、商業施設、物流施設などを取材。REIT、再開発、CRE、データセンターにも関心。慶応義塾大学大学院法学研究科(政治学専攻)修了。2019年東洋経済新報社入社。過去に物流業界などを担当。

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