観光資源の「過保護ライオン」が生んだ悲しい現実 日本人サファリガイドが南アフリカで直面したこと

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

もう一つ、子供ライオンの死因で多いのは、なんとオスライオンによる殺害です。新たなオスがプライドのリーダーとなった時、なるべく早く、確実に自分の遺伝子を残したい新たなオスライオンは、それまでに生まれていた子供を殺します。メスが早く自分の子供を妊娠できるようにするためです。

メスライオンはこれまで大切に育ててきた子供を守るため、自分よりもはるかに体の大きなオスライオンと激しい戦いを強いられ、時にはメスライオンが殺されてしまうことも……。ライオンの最大の敵はライオンとも言えるかもしれません。

寄り添うライオンの母子(写真:『私の職場はサバンナです!』より ©YukaonSafari)

ライオンをターゲットにする密猟も

ただでさえこんなに厳しい自然界を生きているのに、人間によって生み出されるさらなる障壁もあります。それは密猟です。密猟とは、違法に陸上の動物を狩猟したり、植物を採取したりすることです。生活に困っている地域住民は、食料やお金にするため草食動物のお肉を狙って保護区に侵入します。そして針金などを使って作った罠をサバンナに仕掛けるのです。狙いのインパラやシマウマなどがかかることもあれば、この罠にライオンが引っかかってしまうこともあるのです。

足や首の周りなどに針金が巻き付き、首を切ったり絞めてしまったり、怪我をして歩けなくなったり、怪我の炎症から死んでしまったりと、この針金の罠はライオンだけではなく様々な動物に悲劇をもたらしています。

また、ライオンをターゲットにする密猟もあります。中国やベトナム、ラオスなどの東南アジアではライオンの歯や爪は装飾品に、骨は伝統薬として需要の高いトラの骨の代わりに(密猟や生息地の減少が原因で野生のトラは急速に減少しており、トラよりは安価な代替品としてライオンが狙われています)、高値で取引されています。

そもそも、保護区の近くに住む住民にとっては、ライオンは自分の家畜を襲うかもしれない敵のような存在です。そんな敵に復讐するためにライオンを毒殺する住民もいます。そのライオンの死体を売れば大金を得られるとなると、ますます密猟は加速してしまいます。

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事