観光資源の「過保護ライオン」が生んだ悲しい現実 日本人サファリガイドが南アフリカで直面したこと

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同じような年齢の兄弟がいる場合などは「コアリション」と呼ばれるオスグループを作り、お互い支え合って生きていけますが、一人ぼっちになってしまうこともあります。こうしてプライドと縄張りを失った若いオスライオンに待ち受けるのは、命懸けのサバイバルです。

まず、自分で狩りをしなくてはなりません。迷い込んだ他人の縄張りでオスライオンに遭遇すれば、殺されてしまうこともよくあります。そのため、獲物を探すにも常に他の大きなオスから逃げ惑いながらの狩りになります。他のオスに襲われ傷だらけになり、やせ細って亡くなってしまったオスライオンを見たこともあります。

驚くことにオス8頭のうち1頭しか、無事に大人になることができないとも言われています。とても厳しいライオン同士の戦いを生き抜いたオスだけが、晴れてメスをゲットしプライドのリーダーとなり、自分の子孫を残すことができるのです。

しかし、プライドを築いた後もゆっくりしてはいられません。別のオスにいつまたプライドを侵略されてしまうかわからないので、匂いをつけてまわり、遠吠えを響かせながら毎晩のように縄張りのパトロールをします。

地域にもよりますが、一般的にたてがみが黒い方がテストステロンと呼ばれるオスのホルモンが多く、より健康で強いオスであることを表しています。そのため、たてがみが大きくて黒いオスの方がメスにも人気で、プライドのリーダーとなっている場合が多いです。

リーダーのオスライオン(写真:『私の職場はサバンナです!』より ©YukaonSafari)

命懸けで狩りをするメスライオン

メスライオンの一生も波瀾万丈です。メスライオンは一度に1〜4匹の子供を出産するため、複数のメスが同時期に妊娠すると、一気に10頭以上増え、プライドが突然20頭超えの大所帯になることも。

これほどたくさんのライオンのお腹を満たし続けるのはとても大変です。40〜70キロほどのインパラでは一瞬でご飯がなくなってしまうので、バッファロー(300〜800キロほど)などのより大きな獲物を狙わなくてはなりません。

ライオンの群れでの狩りの成功率はおよそ25%と言われています。狩りに成功するには、獲物に気づかれることなくなるべく近くまで行く必要があります。これには風向きなど様々な条件が揃っていなくてはなりません。

狩りに失敗して、バッファローの角がお腹に刺さって亡くなってしまったメスライオンを見たこともあります。子供たちが餓死してしまうことも珍しくありません。少しでも多くの子供が生き残れるように、母ライオンは常に命懸けで狩りに挑戦し続けなければならないのです。

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