資生堂、屋台骨の日本事業が「赤字転落」の深刻 「TSUBAKI」など日用品事業の売却で起きた誤算
「コロナ影響が想定以上に長引いているが、この状況も3年間続いている。これ以上は言い訳になってしまう」
資生堂の魚谷雅彦会長兼CEO(最高経営責任者)は2月の決算説明会で、日本事業についてこう語った。売上高・利益ともに柱であったはずの日本事業が赤字転落しており「当初の想定よりも、成長の回復が大きく遅れている」(魚谷CEO)と危機感をあらわにする。
2022年度の日本事業の売上高は、コロナ禍前の2019年比で32%減に落ち込み(事業譲渡影響等を除く)、コア営業利益(営業利益から構造改革費用などの一時的な要因を除いた数値)は130億円の赤字に転落した。足元の2023年第1四半期決算(1~3月期)も、コア営業利益14億円の赤字(前年同期は41億円の赤字)に沈む。
2022年度に日本基準からIFRSへ会計基準が変更されたが、インバウンド最盛期の2019年度の日本事業の営業利益は910億円であり、単純計算で3年で1000億円程度の利益が消失した格好になる。
中・高価格帯だけで儲かるのか
日本を代表する企業である資生堂が、日本で稼げなくなったのはなぜか。ここで時計の針を2年前に戻す必要がある。2021年7月、資生堂はヘアケア「TSUBAKI」やメンズ化粧品「uno」といった有名ブランドを、投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズに売却した。
これらパーソナルケア事業(日用品事業)は業績を下支えしてきたが、魚谷CEOが掲げる構造改革のもとで中・高価格帯のスキンケアなどを中心とした体制に舵を切った。好採算の高価格帯化粧品に注力する中、日用品事業の商品開発や広告宣伝には経営資源を向けられないという判断からだった。売却額は1600億円だった。
日用品事業は2019年度に売上高1055億円と、グループ売上高の約1割を占めていた。同事業の営業利益は非開示だが、あるアナリストは「低利益率だったと会社は言うが、売却後の営業利益の落ち込み幅を考えると、営業利益率は5%前後あったのでは」とみる。
実際、売却先であるファイントゥデイグループの担当者によると「2022年度の売上高は1000億円超、営業利益率は10%を超えている」という。同じく低価格帯のヘアケア等を展開する花王のヘルス&ビューティーケア事業の同利益率は9.3%であり、コロナ禍でも底堅いカテゴリとなっている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら