資生堂、屋台骨の日本事業が「赤字転落」の深刻 「TSUBAKI」など日用品事業の売却で起きた誤算

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日本事業の復活に向けて欠かせないのが、中国人旅行客を中心としたインバウンド需要だ。中国人向けの団体ツアーでは、ドラッグストアでの買い物がプランに含まれていることも珍しくなく、コロナ禍以前の「爆買い」で資生堂を筆頭とする化粧品メーカーは我が世の春を謳歌していた。

高単価な「セット販売」で外国人観光客のお土産需要を狙う(記者撮影)

今年に入りドラッグストアの店頭では、各化粧品メーカーが1万円前後のセット商品を多く展開するようになった。外国人観光客に手軽に購入してもらう狙いがある。こうした高単価なお土産需要の消失も赤字要因だっただけに、資生堂はじめ各社は本格回復に期待を寄せているとみられる。

ただ、インバウンドの復活には慎重な見方が多い。コロナ禍の間に中国現地では安売り競争が激化し、日本の化粧品メーカーのブランド価値が低下傾向にある。「日本に来て安く買う」という動機が薄まっていることに加え、「Proya」や「Winona」など現地メーカーが急速に存在感を増している。以前の勢いで訪日時に化粧品を購買するかどうか、疑問符が付く。

藤原新社長に降りかかる難題

資生堂にとって主力の中国事業も、2022年度のコア営業利益は39億円の赤字に沈む。足元の収益を支えるのは、空港やクルーズ船などで免税販売を行うトラベルリテール事業や、買収ブランド「NARS」が好調な米国事業や欧州事業という状況だ。

今2023年度の売上高は前期比6.3%減の1兆円、純利益は同18.1%減の280億円と2期連続で縮小する計画となっている。米国事業の円安効果緩和による売り上げ減少や、日用品の生産事業譲渡に伴う久喜工場の減損等を見込んでおり低空飛行が続く。

2023〜2025年度までの新中期経営計画では、2022年度に4.8%だったコア営業利益を、2025年度に12%へ大幅に引き上げる目標だ。営業利益率10%だった2019年度の高収益体制に向けて、V字回復を志す。実現に向けて、日本と中国での本格回復は不可欠となる。

今年1月に、魚谷氏の後継として社長に就任したばかりの藤原COO(魚谷氏は代表権のある会長兼CEOに就任)。新体制の下、かつての輝きを取り戻せるのか。就任早々、難しいかじ取りが求められている。

伊藤 退助 東洋経済 記者

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いとう たいすけ / Taisuke Ito

日用品業界を担当し、ドラッグストアを真剣な面持ちで歩き回っている。大学時代にはドイツのケルン大学に留学、ドイツ関係のアルバイトも。趣味は水泳と音楽鑑賞。

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