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杉本八段が明かした「藤井聡太の鉄道旅とおやつ」 杉本一門の棋士たちの"知られざる日常"を公開

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さて、私の一門の研究会では必ずおやつの時間を設けている。自分が甘党というのもあるが、世代間のギャップを埋めるコミュニケーションの意味合いもある。

そして、それは藤井竜王の修業時代にも当然あった。

当時はコンビニのどら焼きやバームクーヘンをよく出していた。選択肢を多くすると弟子の個性が分かって面白いのだ。この二択は前者が人気で、私はある弟子に聞き、予想外の理由に拍子抜けしたことがある。

「みんなは和菓子が好きなのだね」

「いえ、単にどら焼きの方が量が多そうなので」

10代の少年とはそういうものだった。おやつを通じて弟子を知ることもよくあるのだ。

初期の頃は入門順に選ばせていた。だがそれでは聡太少年が常に最後になってしまう。しかし、段位順では追い越された兄弟子のプライドが傷つく。結局、ジャンケンで決めることが多かったのだが、それはそれで皆楽しそうであった。

杉本一門のおやつも少しずつ贅沢になった

おやつの買い出しも毎回となるとちょっと煩わしい。正直、手近なもので済ませたい時もあった。

「次の研究会のおやつ、家にある煎餅の残りじゃダメかな?」

「それだけじゃ足りないんじゃない?」

こんな会話を自宅でかわし、結局断念するのだ。

『師匠はつらいよ 藤井聡太のいる日常』(文藝春秋)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

大阪から室田伊緒女流二段が参加する際は、差し入れのお土産がおやつにプラスされる。私の準備も、いつもより気合が入るのだ。

「今日のおやつはデパートのケーキだからね」

弟子たちは不思議そうに顔を見合わせ、ひそひそと話し合っている。

「今日は豪華だな」

「なんでだろう?」

「室田さんが参加したからじゃないの?」

私にも室田女流二段にも丸聞こえだが、この素直さが少年らしい。

その後、中澤沙耶女流二段や女性の奨励会員も我が一門に加わり、弟子の数は当時の倍以上に増えた。おやつも少しずつ贅沢な内容になり、今に至っている。

こだわりの我が一門。将棋だけでない、藤井竜王のおやつの活躍(?)が全国に波及して、私も師匠冥利に尽きるのだ。

(「第68回 おやつタイム」2022年9月8日号)

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