仕事が続けられない!子育て中教員の悲痛な叫び 「給特法改正」より配置や仕組みを変えてほしい

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石田:学級編成の問題はすべての教員に関わることですが、とくに出産後の女性教員が復帰する際には配置の配慮が必要ですね。

E:はい。不登校の子がいる場合も、定期的に連絡の必要があったり、スクールカウンセラーと連携を図ったりと、育休明けの女性教員は本当に大変だと思います。とくにスクールカウンセラーは17時までびっしり面談が入っていることが多く、それ以降に打ち合わせが必要になりますから保育園のお迎えなどに影響しますよね。

また、評価のあり方も変えるべきだと思います。通知表の必要性など、そういった根本的な部分から考え直し、働き方の改善を図ることも重要ではないでしょうか。

教育は「国の将来をどう考えるか」という本質的問題

石田:皆さん、ありがとうございました。3回にわたって子育て中の女性教員の過酷な実態や思いをお聞きしましたが、先生方のがんばりによって学校教育は成り立っていること、また、学校の問題はすべて、この国が教育にお金をかけないことにあると改めて感じました。

育休に関しては教員に限らず注目されているテーマですが、学校の場合なぜこのような声が広がっていかないのか。その理由について先日、小学校の校長先生たちが話す機会があったので、聞いてみたところ、「年配の教員が自分も昔は大変だったけれどもやってきたという文化がある」と言っていました。確かにそのような空気感もあると思います。また育休期間は一般的に数年であり、やがて子どもが大きくなるので、今だけ頑張ればなんとかなると思うことも、声を上げにくい理由かもしれません。しかし、現場の実態を為政者へと届けなくてはいつまでもこの実態は変わりません。

現在、教員不足が問題となっています。特に小学校は深刻です。そのような実態の中で、国の取る政策は何か表面的かつ一時的対応に感じられるのは筆者だけでしょうか。給特法を変えて手当を4%から引き上げる、教員採用試験の前倒しなどは本質的改革とは思えません。

教育は未来に対する投資、いわば国の将来をどう考えるかという本質的問題でもあります。公教育が崩壊しかかっている今、本気で先生方の労働問題の解決に取り組まなくては、その先にいる子どもたちへの教育を保障することは難しいと思いました。

(構成:佐藤ちひろ)

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石田 勝紀 教育デザインラボ代表理事、教育評論家

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いしだ かつのり / Katsunori Ishida

1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。4000人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。現在は「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、Mama Cafe、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士。著書に『子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』、『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』ほか多数。

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