採用も昇進も「世界基準」 外資へ日本女性”流出”

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採用も昇進も「世界基準」 外資へ日本女性”流出”

IT化、そして少子化。女性を活躍させない企業はもはや生き残れない。外資で才能を開花させてきた日本女性たち。日本企業で活躍する女性幹部たちをそれぞれ見ていこう。
(週刊東洋経済2月9日号より)

「社内で”ダイバーシティ”を知らない人間は1人としていない」。ゴールドマン・サックス(GS)証券の村山利栄・投資銀行部門マネージングディレクター(前・経営管理室長)は言い切る。”多様性を認める”意味のこの言葉、日本ではまだ新語の部類だが、外資系企業ではずっと前からジョーシキだ。「日本ではダイバーシティが男女平等や機会均等を指すと思われているふしがあるが、それも違う。ビジネスに勝ち残るためのツールにほかならない。GSのように人材がすべての金融業ならなおさらだ」。

 ダイバーシティの対象は性差、宗教、肌の色などさまざまだが、島国ニッポンでは性差にほぼ限定される。「日本の平均からすれば、GSは女性社員比率も女性管理職比率も頑張っている」としながらも、村山氏は「入社時の男女比がほぼ半々なのに、管理職も半々でないのは問題。あの会社は女性が出世できない、仕事を続けられないとなれば、優秀な女性は来なくなる」と指摘する。

 日本では特に、仕事と子育ての両立支援が欠かせない。GS日本では4カ月産休への期間延長、家族の病気等に最大5日まで対応する家族非常時休暇、やはり5日分までベビーシッター代を補助する非常時育児補助金制度を整えている。管理職向け「マタニティ・ツール・キット」も秀逸だ。部下から妊娠報告を受けて不快感を表したり、不適切な発言をしないためのマニュアルだ。

 昨年12月半ば。六本木ヒルズのGS本社で毎年恒例の「ウーマンズ・オープン・デー」が開かれた。集まった女子学生200人を前に持田昌典社長はこう訴えた。「女性を採用しなくても、今日も、明日も、明後日もまったく問題ないだろうが、3年後、5年後、10年後、20年後を考えたとき、会社の競争力は明らかに落ちてしまう」--。

ITを味方につけ、仕事と家庭を軽々両立

 ”女性活用は人事の問題ではなく、経営の問題”という意識は、外資系企業に浸透しきっている。「ビジネスにスピードやイマジネーションが求められる時代に、50歳代の男性だけで考えるアイデアと、若い女性や外国人も含めて出てきたアイデアのどちらが優れているかは自明だ」。IBMビジネスコンサルティングサービス(IBCS)の伊藤久美部長は指摘する。「自社のアイデアを特許で守る時代から、お互いリソースを公開し協業していく時代に変化している。”俺たちのやり口を知らないあいつらは仲間に入れない”なんて発想じゃ日が暮れる」。

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