採用も昇進も「世界基準」 外資へ日本女性”流出”

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 伊藤氏は世界各国のIBMの中でまだ55人しかいないグローバルSME(Subject Matter Expert)の1人だ。SMEとは特定の業界やサービスにおける”専門家”を意味し、いついかなる場所で仕事をしても構わない。たとえば米国にある某企業を担当する場合でも、現地に赴任する必要はない。電話、電話会議、社内チャット、メールなどITを駆使すれば、コミュニケーションは十分取れるからだ。小6の娘さんがいる伊藤氏。「自宅でも『あ、テレコン(電話会議)だからちょっと外すね』という調子。今年から毎週火曜日は在宅勤務にしようかと思って」。IBMはグローバルSMEを100人体制にする計画だ。時間と空間を超越して働くスタイルがあれば、ダイバーシティは軽々と実現できる。

 一方、日本には06年春に上陸したスウェーデンの家具・インテリアチェーン、イケア。イケア・ジャパンの従業員数約1600人のうち9割は日本人だが、全従業員の国籍は15にも及び、多様な環境にある。「異文化の人々でも一つの価値観を共有することは可能。むしろいろいろな国籍の人がいることが、好調な業績の一因となっている」(ラース・ペーテルソン同社社長)。

 北欧は女性の社会進出に関する先進地域として知られる。日本でもむろん女性の活用にも積極的で、管理職の30%は女性が占める。イケア船橋店の5階にある本社では、休み時間ともなると、子どもとおしゃべりする社員の姿が増える。本社に隣接した建物には社内専用の託児所が設置されているのだ。イケアの社内託児所は朝8時から夜9時まで開いており、現在約45名の社員が利用する。男性社員でも15日の育児休暇を与える。「仕事は大事だが、仕事より家庭のほうがもっと大事」とペーテルソン社長。そのほうが社員の生産性、そして創造性が高まるという発想が根底にあるようだ。

もっと輝ける職場求め、日本女性の頭脳流出

 外資の進んだ戦略と戦術は、昇進を阻む見えない壁や育児との両立に悩む日本人女性を引きつける。本誌が大手外資系企業にアンケートしたところ、従業員の日本人女性比率は軒並み2ケタを超えた。外資の側も、彼女たちをどんどん登用して期待に応える。管理職の3割を日本人女性が占める企業も多い(表)。
 
 回答企業のうち、従業員比率・管理職比率ともずば抜けて高い化粧品メーカー・日本ロレアルは「総合職新卒採用では毎年1万通以上の応募の約80%が女性。優秀な女性から支持を得ていることに満足している」。約130人いる研究者のうち62%は女性で、07年には戦略的にも重要なスキンケア開発研究所所長に初めて日本人女性が就任した。

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